今回は、小児の慢性ITPにおいて、ステロイドパルスとIVIGを比較した報告です。こちらはイタリアで行われた研究のようです。
Long-term follow-up analysis after rituximab therapy in children with refractory symptomatic ITP: identification of factors predictive of a sustained response.
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
背景・目的
小児期の慢性ITPの治療として、高用量デキサメタゾン・パルス療法が静脈内免疫グロブリン (IVIg) より有効かどうかを検討する。
方法
今回の2:1のランダム化比較試験では、慢性ITPの23人の子供にデキサメタゾン(0.6 mg/kg/日、 4日間連続、月1回、 6か月間、 n=15)またはIVIg (800 mg/kg,月1回、 6か月間静脈内投与、 n=8)を投与した。
4コースの治療後、非応答者にはクロスオーバーとなる治療をした。
合計20人の小児がデキサメタゾンを受け、 11人がIVIgを受けた。
結果
IVIGグループでは8人のうち1人、デキサメタゾンでは15人のうち2人は、治療無しで3か月以上、少なくとも150×10^9́/Lの血小板数を達成した(完全寛解)。
15人のデキサメタゾン患者の中の2人は、治療無しで3か月以上少なくとも30×10^9́/Lの血小板数を達成した(部分反応)。
IVIG患者8人中1人とデキサメタゾン患者15人中5人は治療を中止した。
5人の患者はIVIgからデキサメタゾンへ(1回の完全寛解)、 3人の患者はデキサメタゾンからIVIgへ(反応なし)交差した。
要約すると、デキサメタゾン患者20人中5人は完全寛解または部分寛解を達成し、 IVIg患者11人中1人は完全寛解を達成した。
入手可能なデータを用いると、3日目までの血小板数が少なくとも30×10^9́/Lに達したのはデキサメタゾン患者12人中9人 (75%) とIVIg小児8人全員 (100%) であった。
研究終了から5年後、完全寛解を達成した3人の小児のうち2人とデキサメタゾンに部分奏効を示した2人のうち1人は、IVIGに完全奏効を示した小児と同様に寛解状態であった。
結論
高用量デキサメタゾンによるパルス療法は、慢性ITPの小児では必ずしも有効ではないが、重度の症候性慢性小児ITPでは試みる価値がある。
考察と感想
本文を読んでいくと、全ての患者は急性期にIVIG and/or ステロイドの投与を受けていたようです。
少し数字を追いかけるのが辛いアブストラクトでしたね。
まとめると以下のようになりました:
Dexaパルス | IVIG | |
N | 15 | 8 |
完全寛解 | 2 | 1 |
部分寛解 | 2 | 0 |
反応なし | 3 | 1 |
クロスオーバー | 3 | 5 |
ドロップアウト | 5 | 1 |
デキサメサゾンでのドロップアウト例が多いのが際立ってみえますね。ここに関して、あまり詳しい記載がありませんでした。
クロスオーバーした症例は、基本的には反応なしでしたので、そういう視点でデータをみる必要がありますね。
まとめ
今回は、小児の慢性ITPにおいて、IVIGまたは高用量のデキサメサゾンを投与した場RCTです。
サンプル数はかなり少ないですが、高用量のステロイドを投与したグループのほうが反応性はよかったですが、ドロップアウトが多く何らかの問題があったのかもしれません。
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
医学書:小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/11/20 00:57:26時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
医学書:小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています