今回は、小児の慢性ITPにおいて、ステロイドパルスを行なった報告を沢山紹介してきました。しかし、この治療法はどこからやってきたのでしょうか?
最初に成人の慢性ITPでの成功例がモデルとなり、小児へも使用してみようという流れになっていたようです。
Response of Resistant Idiopathic Thrombocytopenic Purpura to Pulsed High-Dose Dexamethasone Therapy
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
背景・目的
ほとんどの慢性ITP患者は、ステロイドまたは免疫グロブリン静注療法に反応する。しかし、血小板数の改善は一過性のことがしばしばある。さらに、脾臓摘出術は短期的な有益性しかもたらさないかもしれない。
高用量なステロイドを使用するステロイドパルス療法は、安価で、忍容性が良い。このため、他の治療に抵抗性の慢性ITP患者において有効性を検討した。
方法
2つ以上の標準治療を受けた後に持続性のITPを有する10名の患者を対象に研究が行われた。6サイクルのデキサメタゾン(40 mg/日 x 連続4日間を8日ごとに)で治療した。
結果
全ての患者は血小板数が増加していた(治療前の平均 [±SD], 12,000±8200/mm3; 治療後, 248,000±13万/mm3)。
血小板数は、最終サイクル治療終、少なくとも6か月間において、 10万/mm3以上のままであった。
重篤な副作用はなかった。
ステロイド療法による副腎皮質機能亢進症の症状は治療中に消失した。その費用は患者1人あたり約100ドルだった。
結論
この小グループでは、自然寛解の可能性や、以前の治療から遅延した有効性を除外することはできない。
しかし、高用量デキサメタゾンによるステロイドパルス治療は、難治性ITP患者で低コストかつ最小限の副作用で、治療選択肢を提供する。
考察と感想
10人に投与して、10人とも血小板数が劇的に上昇したようですね。
小児より明らかに有効性は高そうです。特に、脾臓摘出後の患者のほうが、有効性は高かったようです。
一方で、ステロイド内服に伴う副作用は、半数程度で認められていたようです。中断するほどではなかったにしろ、ステロイドを周期的に大量に投与されるわけですので、それなりの弊害はあるでしょう。
まとめ
今回は、慢性ITPにおいて、高用量のデキサメサゾンを投与した成人でのランドマーク的な研究です。
サンプル数はかなり少ないですが、全例で血小板数が回復したようです。
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
医学書:小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/12/21 02:10:50時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
医学書:小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています