小児科

小児の慢性ITPに対する脾臓摘出のデータは?[ギリシャ編]

今回は、小児の慢性ITPにおいて、脾臓摘出による治療の報告を紹介します。

ITPに対する脾臓摘出はかなり昔から行われていたようですね。

マミー
マミー
小児のITPの治療って何がありますか?

Dr.KID
Dr.KID
過去のエビデンスをみてみましょう。

   ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。

 研究の概要

 背景・目的

慢性ITP (cITP) の小児における脾臓摘出術の長期有効性と安全性をレビューする。

方法

脾摘した33人の子供のデータを、後ろ向きに分析した。脾臓摘出から追跡期間の中央値は18.8年であった。

脾臓摘出時の小児の年齢中央値は12歳であり、 ITP期間中央値は3.3年であった。

脾臓摘出の適応は、広範な紫斑、鼻出血および/または歯肉出血、月経過多(n=5)および様々な部位からの重度または再発性出血(n=11)を伴う持続性の重度血小板減少症であった。

結果

患者の85%(n=26)は、脾臓摘出に対し優れたまたは部分反応を示した。

5人の子供 (15%) 、全て女性は反応しなかった。

反応者のうち、 25%は脾臓摘出から6か月~4年以内に血小板減少症の一過性再発を経験した。

重症敗血症による死亡率は1名(3%)であった。

しかし、脾摘患者の大部分は、不完全なワクチン接種および/または抗生物質予防にもかかわらず、今までのところ重症または軽度の細菌感染症に罹患していない。

結論

脾臓摘出術はcITPの小児に対する唯一の有効な治療法であるかもしれない。

しかし、それは一過性再発と関連し、稀に致死的となり得る脾臓摘出後敗血症と関連する。

全ての利用可能な治療方法を試しても、まだ重度の血小板減少症と症状を示したままである場合に限り、 脾臓摘出はcITP患者に対する最後の治療選択肢となるであろう。

考察と感想

本文を丁寧に読んでいくと、1975-2002年の間で、222名の慢性ITPのうち、33名(15%)が脾臓摘出を行う必要があったようです。結構多いのでは!?という印象でしたが、IVIGの治療が普及する前後でみると、かなり異なるようですね。

  1975-85 1985-
脾摘の割合 20/40
(50%)
13/182
(7%)
Dr.KID
Dr.KID
昔と現代でも、適応の基準が異なりそうですね。できれば避けたいと考える方が多いのではないでしょうか。

最初の治療から脾臓摘出に踏み切るまでは3年ほど要しており、12歳が中央値だったようです。特に、思春期に月経過多いで手術をしたのが5名だったようです。

死亡例に関しては、ITP発症から6.5年後に脾摘を行っていたようです。肺炎球菌ワクチンが当時はなく、術後6ヶ月に打っていたようですが、敗血症性ショックで他界されたようです。

まとめ

今回は、慢性ITPにおいて、脾臓摘出後の経過をみています。

33例に脾臓摘出を行い、85%ほどは良好な反応があったようです。

 

 

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ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。