ITPの診断は基本は臨床診断ですが、抗血小板関連抗体などの存在は、以前から言われています。
今回は、ITPにおいて、抗核抗体がどのような役割にあるのかを検討した研究になります。
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
背景・目的
ITPの子供と成人患者における抗核抗体 (ANA) 検査の臨床的意義を検討する。
方法
1998-2004年のカルテを後方視的検討し、小児ITPは365例、成人ITPは108例が対象となった。
ANA陽性例は経験豊富な血液内科医を2006年12月までに受診し、自己免疫疾患を示唆する症状を定期的に追跡された。
全患者の平均追跡期間は3.6年(範囲:2.1~7年)であった。
ITPの診断時に、結合組織病(CTD)と診断された患者は研究から除外された。
結果
小児ITPは365例であったが、内訳は急性ITPが301例 (82.4%) 、慢性ITPが64例 (17.6%) であった。
ANA力価≧1:80は小児ITP 365例中33例 (9.04%) で陽性であった。
急性群は21例 (6.9%) 、慢性群は12例 (18.7%) であった。
成人ITP患者108例において、31人 (28.7%) の患者は急性であり、 77人 (71.3%) の患者は慢性ITP症例であった。
ANA力価≧1:80は成人ITPの108人の患者中36人 (33.3%) で陽性であった。
急性群は12例 (38.8%) 、慢性群は24例 (31.2%) であった。
追跡期間の終了時に、シェーグレン症候群 (SS) は、 1人の成人慢性ITP症例のみで診断された。
他のANA陽性患者は誰もSLEまたは他のCTDを発症しなかった。
結論
著者らのデータは、 ANA陽性が成人および小児のITP患者でしばしば認められることを示す。
また、 ANA陽性の検出はSLEまたは他のCTDを発症するリスクのあるITP患者を予測するのに十分ではないことを示した。
小児において、ANAの陽性率は、急性と慢性ITP患者では大きく異なる。よって、小児ITPの慢性化の指標としてANA陽性が考えられる。
しかし、急性ITPと慢性ITPの鑑別におけるANA陽性の意義とその有用性を明らかにするためには、大規模研究が必要であろう。
考察と感想
実際にTableにしてみると理解しやすいと思います:
ITP | 急性 | 慢性 |
N | 301 | 64 |
陽性 | 21 | 12 |
Risk | .07 | .19 |
RR | 2.69 (1.39, 5.18) |
|
RD | 11.8% (1.8%, 21.8%) |
ANA陽性率は、慢性ITPの方がリスク比にして2.7倍、リスク差にして12%ほど上昇していますね。
小児においてANA+の分布は以下の通りだったようです:
- 1:80 = 4人
- 1:160 = 22人
- 1:320 = 6人
- 1:640 = 1人
- 1:2560 = 0人
一方で、慢性化を予測できたとして、診断時に何かできるかと言われると、現時点では有効な策(例えば初期の治療方法の変更など)が思い浮かばないです。
まとめ
小児ITPの診断時にANAが陽性であった場合、慢性化するリスクが上昇する傾向にあったようです。
また、ANAが陽性であったしても、この研究に参加した33名の小児では、後に他の膠原病疾患と診断されるケースはなかったようです。
急性ITPと慢性ITPの鑑別におけるANA陽性の意義とその有用性を明らかにするためには、前向きの大規模研究が必要と思われます。
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