便秘のお子さんは、そうでないお子さんと比較して、異なる点がいくつかあるのは昔から知られています。例えば、
- トイトレの完了に時間がかかる
- 野菜の摂取量が少ない
- 水分の摂取量が少ない
などがあげられます。今回は、その研究をご紹介します。
- 小児の慢性便秘を対象に行われた研究
- 便秘のある小児の方が、排泄習慣に規則性がなく、トイトレの完了時期がやや遅く、飲水量が少ない傾向
Estudio caso-control de los factores de riesgo asociados al estreñimiento. Estudio FREICase-control study of risk factors associated with childhood constipation. The FREI study
スペインからの報告です。
水分をしっかり摂取すると便秘は改善するのか?
研究の背景/目的
小児は便秘に最も影響を受ける患者群の1つである。著者らの目的は,小児期便秘に関連する危険因子を同定し,記述することであった。
研究の方法
この研究では、a case-control retrospective, open and multicenter designが行われた。
可能性のある危険因子に関する臨床データを臨時質問票により収集した。便秘のある小児とない小児の2群を研究した。
研究の結果
921人の子どもたちが対象で、このうち898例 (97.6%) が統計解析対象集団とされた。便秘群の小児は408人(45.4%),非便秘群の小児は490人(54.5%)であった。
便秘の子供のほとんど(53.6%)は,便秘の家族歴(母親)があったのに対し,便秘でない子供では21.4%であった(p<0.05)。
便秘の子供の半分以上(53.2%)は,彼らのトイレ習慣の規則性の欠如を報告し,便秘でない子供の64.9%は定期的にトイレに行っていた。
トイレトレーニングは,便秘のない子供(3年で) (93.2%)では,便秘のある子供(83.8%)より少し早く開始した(p<0.05)。
学校では,便秘の小児の57.4%がトイレを使用しなかったのに対し,便秘のない小児では26.8%であった(p<0.05)。
便秘の小児の合計73.4%が一日にコップ四杯未満の水しか飲まなかったのに対し、便秘のない小児では47.1%であった(p<0.05)。
食事での野菜と豆類の消費は,便秘のない子供より便秘の子供で有意に低かった(p<0.05)。
小児期の便秘に関連する危険因子は,便秘の家族歴,不規則なトイレ習慣,食物繊維含量の低さおよび果物摂取なしであった。便秘に対する主な予防因子は,水と野菜の消費および学校でのトイレ使用に関する訓練であった。
結論
小児期の便秘に関連する危険因子は,便秘の家族歴,不規則なトイレ習慣,食物繊維含量の低さおよび果物摂取なしであった。
便秘に対する主な予防因子は,水と野菜の消費および学校でのトイレ使用に関する指導であった。
小児の便秘を予防し,規則的な排便を得るためには,毎日の排便習慣と食事の変更が必要である。この予防的介入は学校で強化されるべきだ。
考察と感想
沢山データがあったので、少し表にまとめてみました:
便秘 | あり | なし |
N | 408 | 490 |
家族歴あり (母) |
53.6% | 21.4% |
排泄習慣の規則性 なし |
53.2% | 35.1% |
トイトレ完了 | 83.8% | 93.2% |
学校のトイレ 使用しない |
57.4% | 26.8% |
飲水<コップ4杯 | 73.4% | 47.1% |
とはいえ、水分の摂取量を増やせば便秘が改善するかはまた別問題で、実際に水分量を増やして改善するか確認しないといけません。
まとめ
今回の研究は、便秘のある小児とない小児の特徴を比較した研究です。
便秘のある小児の方が、排泄習慣に規則性がなく、トイトレの完了時期がやや遅く、飲水量が少ない傾向にあったようです。
これらの因果に関しては、別の研究が必要と思います。
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