- 便秘には野菜を
- 食生活を改善させましょう
と、便秘の治療の際に、医療者からアドバイスされることがあるかもしれません。あるいは、便秘に食物繊維が効く、というのは、すでにご存知の保護者の方々も多いかもしれません。
今回は、小児の便秘において食物繊維の摂取量を増加させることで、下剤の頻度が減るかを検討した研究をご紹介します(対象は、重度の発達障害のある小児です)。
- 研究の最初に食物繊維の摂取量を確認:2 g/日と少なかった
- オールブランを用いて介入
- 便秘は改善する傾向にあった
Tse PW, Leung SS, Chan T, Sien A, Chan AK. Dietary fibre intake and constipation in children with severe developmental disabilities. J Paediatr Child Health. 2000 Jun;36(3):236-9.
香港からの報告です。
食物繊維は重度の発達障害のある小児の便秘を改善させる?
研究の背景/目的
便秘は重度発達障害 (DD) の小児における一般的な問題である。
本研究の目的は, 施設に住む重度発達障害(DD)のある小児の食物繊維摂取量を調査し, さらに繊維摂取量を増加させることで緩下剤の使用の頻度が減少するか評価することであった。
研究の方法
ベースライン研究を実施し, 重度発達障害 (DD) のある小児において、食物繊維および主要栄養素摂取量を評価した。
各食事で標準的に提供される栄養素(食物繊維を含む)を計算し,1日の主要栄養素と食物繊維摂取量を推定した。
その後,繊維摂取量の増加が便秘を軽減できるかどうかを評価するために介入研究を実施した。3歳から17歳の小児(合計20名)を4か月間評価した。
重度発達障害 (DD) のある小児の居住施設では, 2日間連続して自発的な排便がない場合,緩下剤がルーチンに処方された。
繊維摂取は,オールブラン (R) (Kellogg Company, Battle Creek, MI, USA)とデザートの添加により段階的に増加した。
その後, 子供1人当たりの週当たりの緩下剤使用の平均数を異なるステージで比較した。
研究の結果
ベースラインの繊維摂取量は約2 g/日であった。
子供一人当たりにおいて、1週間に下剤が必要であった平均回数数は, ベースライン値の1.22 (月5回程度の下剤) (標準偏差 (SD) =0.36)) から第一段階で0.90 (月に約3.5回の下剤) (標準偏差=0.75), 第二段階で0.71 (月3回程度の下剤) (標準偏差=0.40)まで統計学的有意に減少した。
Paired t- testを用いて,ベースラインと比較した場合,差異は統計的に有意であった(繊維補給の第一段階ではP<0.05,第二段階ではP<0.01)
結論
1日の食物繊維摂取量は2 g/日と非常に低かった。
繊維摂取量を17 g/日(ステージ1)に増加させることにより,便秘の緩和と緩下剤の使用量の有意な減少が示された。
繊維摂取量をさらに21 g/日(ステージ2)まで増加させると,緩下剤の使用がさらに減少することが示された。
しかし,繊維摂取量の介入を行ったステージ1とステージ2の間に統計的有意差はなかった。
重度発達障害 (DD) の小児における便秘をさらに軽減する別の方法については,さらなる研究が必要である。
考察と感想
アブストラクトに提示されたデータを整理すると以下のようになります:
介入前 | ステージ1 | ステージ2 | |
期間 | – | 20日 | 6週間 |
食物繊維 摂取量 |
2g/日 | 17g/日 | 21g/日 |
下剤の使用 回/週(SD) |
1.22 (0.36) |
0.90 (0.75) |
0.71 (0.40) |
1ヶ月の換算 | 約5回 | 約3.5回 | 約3回 |
一般に、小児の食物繊維の推奨摂取量は2歳以上であれば [5〜10 + (年齢)]g と考えられています。今回の研究は3歳以上の小児が対象ですので、この年齢では最低量でも8gは摂取した方が良さそうです。
まとめ
今回は、香港から報告されたシングルアームの介入試験です。
重度の発達障害と慢性便秘症のある小児を対象に、食物繊維の摂取量を増加させたところ、下剤が必要となるケースが減少したようでした。
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