今回の研究は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した乳児が、どのくらいの範囲でウイルスを拡散させていたのか、検討した研究になります。
「乳幼児は無症状のことが多いなら、周囲に感染させないのでは?」という意見があるかもしれませんが、そうとも限らないという結果でした。
- 無症状の乳児において、ベッド・テーブル、診療しは医療者からウイルス量を検査
- ベッド、テーブルなどからはウイルスが検出された
- 医療従事者のフェイスマスクやマスクからは検出されず
1例報告ですが、貴重な研究と思います。オープンアクセスですよ。
研究の概要
6ヶ月の乳児が新型コロナウイルスの診断が鼻咽頭ぬぐい液のPCRで確定し、無症状ではあるものの、経過観察目的で入院となった小児です。
入院後2日目に、1回だけ38.5度の発熱を呈した以外は、無症状だったようです。
同日に、ベッド・テーブルといった乳児の周囲の者から、さらに医療従事者のフェイスシールド、マスク、ガウンから新型コロナウイルスが検出されるかを確認しています。
研究結果は以下の通りでした:
(素材は原著より拝借)
乳児のベッド、その周囲や、テーブルからは新型コロナウイルスが検出されたようです。
一方で、15分ほど同室で過ごした医療従事者のマスク、フェイスシールドやガウンからはウイルスは検出されなかったようです。
感想と考察
乳児の周囲の物品からの検出は、おそらくですが、よだれや啼泣に伴う分泌物などから拡散されたと考えられています。
一般的には、感染者である乳児から離れれば離れるほど、ウイルス量は減ると考えられます。一方で、乳児の場合は、哺乳瓶やミルクの缶、排泄物の処理などの機会に、ウイルスが広がる可能性もあります。
まとめ
6ヶ月の乳児で、新型コロナウイルスに感染するも、無症状だった小児の症例です。
無症状とはいえ、ベッド周囲やテーブルからはウイルスが検出されています。
Dr. KIDの書籍(医学書)
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/12/30 02:40:54時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています
当ブログの注意点について