新型コロナウイルス

乳幼児の方が家庭内の二次感染を生じさせるリスクが高い?[アメリカ編]

今回は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の家庭内感染のオッズは、小児の年齢では異なるのかを調査した研究を紹介します。

マミー
マミー
家庭内感染のオッズは、小児の年齢では異なりますか?

ユーキ先生
ユーキ先生
公表された研究はいくつかあったと思います。

Dr.KID
Dr.KID
一緒に見てみましょう。

ポイント

  •  JAMA pediatricsからの報告
  •  新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の家庭内感染のオッズは、小児の年齢では異なるのかを調査
  •  低年齢の方が家庭内感染を生じる可能性が高かった

 2021年8月にJAMA pediatricsから公表されたようです

SARS-CoV-2感染症の小児家庭内感染と年齢の関連性[アメリカ編]

研究の背景/目的

COVID-19パンデミックの初期には小児の症例数が少なかったため、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の小児の家庭内感染についてはまだ十分に研究されていない。

本研究では、年少児による家庭内感染のオッズが年長児と比較して異なるかどうかを調べた。

研究の方法

本研究は、2020年6月1日から12月31日の間に、カナダのオンタリオ州で行われたぽピュレーションベースのコホート研究である。

検査室で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染が確認された18歳未満かつ家庭内で最初の感染者であった個人宅を対象とした。

スイートルームの情報がないアパートに住んでいる場合、複数の初発ケースがある場合、初発ケースの年齢が不明な場合は、対象外とした。

小児の初発ケースの年齢を,0~3歳,4~8歳,9~13歳,14~17歳に分類した

家庭内感染は、小児の指標症例の1~14日後に少なくとも1人の二次症例が発生した家庭と定義した。

Dr.KID
Dr.KID
小児が初発の家庭を追跡し、その後に家族が感染するか否かをみたようですね。

研究の結果

合計6280世帯で小児の初発症例が発生し,1717世帯(27.3%)で二次感染が発生した。

小児の初発ケースの平均年齢は10.7(SD, 5.1)歳で,2863(45.6%)が女性であった。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を家庭内接触者に感染させる確率は、14~17歳の子供に比べて、0~3歳の子供が最も高かった(オッズ比1.43、95%CI、1.17~1.75)。

この関連性は、二次症例を初発症例の2~14日後または4~14日後と定義し、症状の有無、学校・保育園での発生との関連、学校・保育園の再開の有無で層別化した感度分析でも同様に観察された。

また、4~8歳および9~13歳の小児でも感染のオッズが上昇していた(4~8歳:オッズ比、1.40;95%CI、1.18~1.67、9~13歳:オッズ比、1.13;95%CI、0.97~1.32)。

結論

今回の研究では、乳幼児は学童や10代に比べて新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症を伝播しやすい可能性があり、0~3歳児で最も高い伝播オッズが観察された。

小児の年齢層における感染力の違いは,家庭内での二次感染のリスクを最小限に抑えるために,学校や保育園だけでなく家庭内での感染予防にも影響する。

若い小児の初発症例による感染のリスクを確立するためには、さらに集団ベースの研究が必要である。

考察と感想

  •  感染するリスク
  •  家庭内で感染を伝播させるリスク

を切り離して、今後、議論をする必要がありそうですね。

乳幼児の行動範囲は限られており、一般的には新型コロナに感染するリスクは低いと考えられています。

しかし、(リスクは低くても)感染してしまった場合、家庭内での二次感染を起こす力は、10代の小児よりも高いのがわかりました。

乳幼児を子育て中の方なら実感いただけると思いますが、他の感染症でも親が一緒に罹患してしまうことは小児科外来ではあります。
泣いている子供を抱っこしたり、排泄のケアをしたり、より近距離での接触が多いからでしょう。

Dr.KID
Dr.KID
保護者の方々はワクチン接種をして備えましょう。

まとめ

今回は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症の小児家庭内感染と年齢の関連性を検討したコホート研究でした。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を家庭内の保護者や兄弟姉妹に感染させるリスクは、乳幼児の方が10代の子どもよりも高い可能性があります。

 

Dr. KIDの執筆した書籍・Note

医学書:小児のかぜ薬のエビデンス

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

医学書:小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/11/21 01:10:36時点 Amazon調べ-詳細)

Dr.KID
Dr.KID
各章のはじめに4コマ漫画がありますよー!

noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

 

当ブログの注意点について

Dr.KID
Dr.KID
当ブログは医療関係者・保護者の方々に、科学的根拠に基づいた医療情報をお届けするのをメインに行なっています。参考にする、勉強会の題材にするなど、個人的な利用や、閉ざされた環境で使用される分には構いません。

Dr.KID
Dr.KID
一方で、当ブログ記事を題材にして、運営者は寄稿を行なったり書籍の執筆をしています。このため運営者の許可なく、ブログ記事の盗用、剽窃、不適切な引用をしてメディア向けの資料(動画を含む)として使用したり、寄稿をしないようお願いします。

Dr.KID
Dr.KID
ブログの記載やアイデアを公的に利用されたい場合、お問い合わせ欄から運営者への連絡お願いします。ご協力よろしくお願いします。

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。