日本小児科学会から2/28に発表された「新型コロナウイルス感染症に関するQ&A」をご紹介します。
- 中国と日本の感染者数の推移
- 日本小児科学会のQ&Aの紹介
日本小児科学会から、こども新型コロナウイルスにおける症状や注意点に関するQ&Aが出ています。
非常にわかりやすい内容ですので、一読をお勧めします。
私がnoteで紹介した文献も、Q&Aの参考文献として、丁寧に網羅的に記載されています。https://t.co/U72YFuSxTP
— Dr. KID (@Dr_KID_) February 28, 2020
中国と日本の感染者数の推移
中国と日本の感染者数の推移は以下の通りです (2/27時点)
- 世界:83,127人
- 中国:78,824人
- 日本:215人
大半が中国で占められていますが、世界全体では8万人が報告されていますね。韓国とイタリアが増えてきており、新たなフェーズに入った印象です。
中国の累積感染者数の推移
中国では、もうすぐ8万人に差しかかろうとしていますが、徐々に新規感染者は鈍化してきて、頭打ちになってきている印象です。ここのところは、8万弱がずっと推移していますね。
図のY軸のスケールを対数化させたグラフが右側です。感染者数の増加速度は、徐々に鈍化してきている印象です。
日本の累積感染者の推移
日本の患者数の推移は以下の通りです:
この図を見てしまうと、まだまだ上昇トレンドにありそうで、勢いは増してきている印象で、これから急速に増えてくるかもしれません。
右の図は、Y軸を対数化しています。
累積数は200人を超えて、まだ上昇トレンドにあるのが分かります。
韓国で感染者数が2,000人を超えたという報告も出ているようです。シンガポールは90人、イタリアが600人を超えています。
また、アメリカなどを含め、渡航制限が今後どうなるかも注目しています。現在はアメリカは日本に対してレベル2「高齢者や慢性疾患のある人は、不要な渡航を控え、延期するよう推奨」の設定のようです。
韓国に対しては、さらにレベル3に引き上げられています。
新型コロナウイルスの診断に関するQ&A
2020年2月28日に、日本小児科学会の予防接種・感染症対策委員会から「新型コロナウイルス感染症に関するQ&A」を発表しています。今回は少しピックアップをして、解説してみようと思います。
Q1. 子どもが感染するとどのような症状が?
これまでの報告もあわせると、家庭内において感染している例が多く、発熱、乾いた咳、倦怠感を訴える一方で、鼻汁や鼻閉などの上気道症状は比較的少ない様です。一部の患者では嘔吐、腹痛や下痢などの消化器症状を認めました。血液検査でも明らかな特徴はありません。胸部エックス線検査や肺のCT検査を行うと肺炎が認められる患者もいますが、ほとんどが1ー2週で回復しています。感染していても無症状である可能性も指摘されていますが、子どもは正確に症状を訴えられない事に注意しなければなりません。
これまでの報告を要約した内容です。症状に関してまとめると、
- 感染しても無症状のことがある
- 発熱、咳、倦怠感が多い
- 鼻汁や鼻閉は比較的少ない
- 嘔吐・腹痛・下痢といった症状を認めることもある
- 1〜2週間で回復することが多い
といった特徴があります。
検査に関しては、
- 血液検査で特徴的な所見はない
- レントゲンやCTで肺炎を認めることがある(無症状でも)
が記載されています。
PCR以外で確定診断するのは難しいのが現状です。一方で、PCRという検査の感度もそこまで高くないのが現状です。
Q2. 子どもで重症化はするのか?
今のところ、成人が感染し、呼吸不全を呈し、重症化した報告はありますが、小児患者が重症化したという報告は稀です。しかし、成人同様に感染後1週間ごろより呼吸状態が急速に悪化する可能性も指摘されています。
基本的に重症化しているのは成人、特に高齢者です。例えば、先日解説した致死率のグラフを見ていただくと、これは明確です。
こちらは、中国のCDCから報告されたデータは、例えば、10歳未満の死亡例は今の所ありません。10〜19歳でも死亡例は1例のみです。
一方で、小児の情報が少ないのが現状です。「小児」といっても、月齢・年齢によって重症化のリスクは異なるのが予測されますが、今の所データが少なすぎてなんとも言えない現状です。
また、SNS上では、医師を含む専門家でも「小児は重症化しない。その報告すらない」とまで言っている方を見かけますが、あまりに楽観視するのも良くないと私は考えています。現に1例だけですが、1歳小児の重症例も報告されています:
あまり煽るつもりはありませんが、少ない情報で、楽観的になりすぎないのも重要かと思っています。もちろん、悲観的に煽るのもよくありません。事実を事実として認識することが重要です。
Q3. 小児ぜんそくなど、合併症のある注意すべきことは?
一般的に小児ぜんそくなどの合併症を持っている子どもの呼吸器感染症は重症化する可能性があります。ただ基礎疾患ごとにリスクや対応は異なりますので、かかりつけの医師にご相談ください。また、周囲の人が感染しないように気を付けることが重要です。
これはその通りと思います。基本的には風邪を含めた感染症に対する注意点が同じで、
- 感染したら重症化することはある
- 基礎疾患によって、そのリスクの大きさや対応は異なる
- かかりつけの医師にもよく相談をする
- 大人を含め、周囲の人が感染しないように気をつけることが重要
でしょう。
Q4. 母乳はやめた方がいい?
母親が感染している場合は、接触や咳を介してお子さんが感染するリスクがありますので、直接の授乳は避ける必要があります。母乳自体の安全性については現時点では明らかではありませんが、中国からの報告では、感染した女性6名の母乳を調べたところウイルスは検出されなかったと報告されています。従って、母親が解熱し状態が安定していれば、手洗い等を行った上で搾乳により母乳を与えることは可能と思われます。
中国からの報告で、6名だけになりますが、母乳からウイルスが検出されなかったという報告もあります。こちらは、先日、私もほむほむ先生もツイッターとブログで報告しています:
確かに、接触や咳を介して感染する可能性が高いので、万全を喫するのであれば、直接の接触を避けるために、搾乳をした上で母乳を与えるのが良いでしょう。
Q5. マスクはどうしたらいい?
感染している人のくしゃみや咳に含まれる飛まつを直接浴びないという観点からは、マスクをすることの利点はあるかと思いますが、小さなお子さんでは現実的ではないと思われます。子どもの患者のほとんどは、家庭内において親から感染していますので保護者の方が感染しないこと、感染した方から1-2メートル以上の距離を保つことがお子さんの感染予防につながります。
明らかなエビデンスがあるわけではないですが、マスクはしないより、できた方がベターという解釈だと思います。私も同じ意見です。ただ、小さなお子さんには難しいかもしれません。
また、ウイルスに汚染されたおもちゃや本などに触れた手で、口や鼻、目を触ることでも感染しますので、手洗いや消毒も大事です。
手を介して、口・目・鼻といった粘膜に付着して感染することがあるので、手洗いは非常に重要ですね。
病院では他の患者さんから感染するリスクがあることはよく知られています.
例えば待合室がそうだと思いますが, 小児科の環境で注意すべきものがあります.
それは「診察室・待合室にあるおもちゃ・本」です.魅力的なものほどみんなが触るので, より感染源になりえるリスクがあると思われます.
— NS@小児科医 (@nuno40801) February 18, 2020
これは、以前、NS先生(@nuno40801)もツイートされています。病院や公共の場に置かれているおもちゃや本が、意外と感染源になってしまうことがあります。
Q6. 医療機関受診は?
現時点(2020年2月27日)において、国内で新型コロナウイルスに感染している小児は数例に留まっています。インフルエンザも含めた他のウイルスによるものと考えるのが妥当です。
また、新型コロナウイルス感染症を疑って一般の医療機関や休日夜間急病診療所等を受診しても、診断を確定するための検査はできません。むしろ受診によって新型コロナウイルスの感染の機会を増やす危険性があることを念頭におく必要があります。
さらには、新型コロナウイルス感染の軽症者に対する特異的な治療法はありません。
ここには重要な点がいくつか記載されています:
- 現時点で、日本国内での小児の症例は数例
- 普通の病院・クリニックや夜間診療所では検査ができない
- 安易な医療機関は、感染の機会を増やすかもしれない
という点です。
一方で、具合が悪くなった時は、ウイルスの検査目的以外にも「重症度の評価」「医療的な介入の必要性」「入院の適応」などを含め、医療機関に受診された方が良いでしょう。これは、一般的な風邪の対応と同じです。
今の段階では、呼吸数が多い、肩で息をする、呼吸が苦しい、唇や顔の色が悪いなど、肺炎を疑う症状があり、入院加療が必要と考えられる場合
ここにかかれてある内容の時は、医療機関にお早めに受診された方が良いでしょう。
Q7. 保育所、幼稚園、学校などに行くのは控えた方が良い?
現時点では、国内の小児の患者は稀で、成人の感染者からの伝播によるものですので、保育所、幼稚園、学校などへの通園、通学を制限する理由はありません。しかしながら、地域で小児の患者が発生した場合、またはそれが想定される場合には、一定期間、休園や休校になる可能性があります。今後の地域での流行状況に応じて、臨機応変な対応が必要となりますので、お住まいの地方自治体からの指示に従ってください。
また、各家庭内で感染者がでた場合は、その子どもは濃厚接触者として登校、登園を控えることになります。また、厚生労働省から微熱や風邪の症状がある場合は、登校、登園を控えるようにという推奨が出ています。それらを守っていただく事が大事です。
これは記載された内容の通りと思います。
感想と考察
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)が騒動になって1ヶ月以上になりますが、小児に関しては、まだ情報が足りていない印象です。
現時点で分かっていることをまとめると、以下の通りです:
まとめ
今回は、
- 中国と日本の感染者数の推移
- 日本小児科学会のQ&Aの紹介
についてアップデートさせていただきました。
引き続き、新しい情報、過去の文献を読み込んだら、報告させてもらおうと思います。
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