香港においても新型コロナウイルス感染症の対策として、様々な公衆衛生対策が実施されているようです。
今回紹介する論文では、これらの公衆衛生対策が新型コロナウイルスやインフルエンザにおいて、どのように影響を与えたのかを検討しています。
- 香港における新型コロナウイルス感染症の疫学的な追跡
- 公衆衛生学的なアプローチで、新型コロナウイルスの伝播はある程度抑えられている印象
新型コロナウイルスにおける、香港での感染の伝播のトレンドを見た研究です。
研究の概要
方法
著者らは、検査室で確認された新型コロナウイルス感染症、全年齢の外来患者におけるインフルエンザサーベイランスデータ、および小児におけるインフルエンザ入院に関するデータを分析した。
著者らは、 新型コロナウイルスとインフルエンザA H 1 N 1の実効再生産数 (Rt) を推定して、経時的な変化を推定した。
新型コロナウイルスに対する態度および人口行動の変化は、2020年の1月20日~23年、2月11日~14年、および3月10日~13年に実施された3件の電話調査によってレビューされた。
結果
新型コロナウイルスの実効再生産数は、香港で8週間、約1のままであった。
インフルエンザ感染は、1月下旬のソーシャルディスタンスなどの実施と人々の行動変化に伴い、に大幅に減少し、コミュニティにおける伝播率は44% (95% CI 34~53%)減少した。
これは、学校閉鎖開始前のRt 1・28 (95% CI 1・26~1・30)から0・72 (0・70–0・74) に低下した。
同様に、小児の入院率に関して、Rtは33% (24–43%) の低下を認めた。実効再生産数は、学校閉鎖開始前のRt 1·10 (1·06–1·12) から学校閉鎖後のRt 0·73 (0·68–0·77) となった。
外出時にマスクを着用している、人混みを避けていると回答した人の割合は以下の通りであった:
1月 | 2月 | 3月 | |
マスクの着用 | 74.5% | 97.5% | 98.8% |
人混みを避ける | 61.3% | 90.2% | 85.1% |
解釈
本研究は、公衆衛生学的なアプローチ(国境の制限、隔離、ソーシャルディスタンス、人々の行動変化)がCOVID‐19の伝達低下と関連することを示している。
感想と考察
今回の新型コロナウイルスに関しては、公衆衛生学的なアプローチは一度に行われていることが多く、単独での評価が難しいかもしれないですね。
「学校閉鎖は意味があったのか?」は、今後、議論になるのかもしれませんが、非常に難しい問題と思います。現在もそうですが、小児の感染者数が少ないのもその理由の1つです。
2月の上旬から、実効再生産数は下がってきていて、じわじわと学校閉鎖などの影響はあるように思えます。しかし、3月上旬に、香港では輸入症例が増えて、この値が1付近に戻ってしまっています。
論文中の「インフルはRtが減少したが、新型コロナは1付近であった」という点だけで、「学校閉鎖に意味なし」と言ってしまうのは、やや論理が飛躍している気がします。
まとめ
今回の研究では、公衆衛生学的なアプローチの有効性を評価しています。
どれか1つの単独の効果というより、学校閉鎖、ソーシャルディスタンス、マスクの着用率の変化、3密を避けるなど、複合的な要素で実効再生産数は1くらいの抑えられているような印象を受けました。
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