今回は、新型コロナウイルスに感染した妊婦から産まれた10例の新生児の症例集積を紹介させていただきます。
- 新型コロナウイルスに感染した妊婦から出生した10例の新生児の症例
- 垂直感染はなさそう
- 9名は状態は安定している。1名は死亡
- 死因の詳細は不明で、新型コロナウイルス感染が原因かははっきりと分からない
感染者の推移 (3/14):
- 世界:140,201人
- 中国:80,824人
- 日本:722人
- 韓国:8086人
- イタリア:17,660人
- イラン:11,364人
イタリアとイランがすごい勢いで増えていいます。気づけば、ヨーロッパの国々も増加傾向にあります。ドイツ・フランスが3000-4000名前後に増加しています。
アメリカも患者数が徐々に増えてきています。
新型コロナウイルスが検出されるも無症状だった小児
新しい新生児の症例報告を発見したので、簡単にまとめようと思います。
概要
今回は、新型コロナウイルスに感染した妊婦9名から出生した新生児10名(男8; 女2)の症例集積です。1/20〜2/5の間に生まれたようです。
妊婦の症状
妊婦の症状のタイミングですが、以下の通りでした。
N = 9 | ||
分娩前 | 4 | Oseltamivirで治療, 3 |
分娩日 | 2 | |
分娩後 | 3 | 抗ウイルス薬, 0 |
分娩の方法
N = 9 | |
帝王切開 | 7 |
経膣分娩 | 2 |
そのほかのまとめの表も掲載されていました:
(原著より拝借)
新生児の特徴
新生児の特徴は、以下の通りでした:
咽頭スワブのPCRを確認していますが、新生児は全て陰性だったようです。
(論文より拝借)
垂直感染はこれまでの過去の報告をみてもありませんでした。
一方で、出生後に1名死亡している点です。著者らの記載を確認してみました。
Among them, one patient was delivered at a gestational age of 34+5 weeks and was admitted 30 minutes after delivery due to shortness of breath and moaning. Eight days later, he developed refractory shock, multiple organ failure, and disseminated intravascular coagulation (DIC), which were treated by the transfusion of platelets, suspended red blood cells, and plasma; he died on the 9th day.
簡単に意訳させていただくと、「34週5日で出生した新生児は、分娩30分後に呼吸苦を認めています。8日後に、呼吸不全、ショック、多臓器不全、DICを起こし、血小板・赤血球・血漿を投与して治療したものの、9日目に亡くなりました」と記載されています。
著者らの理由は以下の通り記載していました。
One of them died, which might be due to poor awareness of the disease, poor immune function of the neonate, and quick disease progression; massive replication of virus in many tissues leads to major viremia, leading to refractory shock, multiple organ failure, and DIC, which cannot be corrected by blood transfusions and symptomatic supportive treatments.
死因については、新生児の免疫能が低かった、疾患が急速に進行した、ウイルスが大量に複製され多臓器に広がった、などが記載されています。
他の類似の研究では、羊水、臍帯血、便、胃液などからもPCRを行なっており、この論文の情報ですと片手落ち感があります。
感想と考察
現時点では妊婦から新生児への垂直感染の報告はなさそうです。しかし、分娩前に感染した場合、新生児に何かしらの悪影響を及ぼす可能性があります。ただ、新型コロナウイルスが原因なのか、感染症によるストレスが原因なのか、まだデータは不足している印象です。
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)が騒動になって1ヶ月以上になりますが、小児に関しては、徐々に情報が増えてきた印象です。現時点で分かっていることをまとめると、以下の通りです:
まとめ
今回は、
- 中国と日本の感染者数の推移
- 10例の新生児の症例集積研究
についてアップデートさせていただきました。
引き続き、新しい情報、過去の文献を読み込んだら、報告させてもらおうと思います。
新刊(医学書)発売決定!
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/11/21 01:00:58時点 Amazon調べ-詳細)
noteもやってます
当ブログの注意点について