今回は、イタリアにおいて、新型コロナウイルスに感染した妊婦42例と、その新生児の経過をまとめた症例集積を紹介しようと思います。
- 新型コロナウイルスに感染した妊婦42例と、その新生児の経過
- 経膣分娩が24例、帝王切開が18例
- 新型コロナウイルス感染は3例で、うち2例はマスクなしで母乳栄養をしていた
- 母乳栄養をする際は、マスク着用など、感染への配慮は必要
Vaginal delivery in SARS-CoV-2 infected pregnant women in Northern Italy: a retrospective analysis.
イタリアにおいける42例の症例報告です。
研究の概要
目的と方法
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した妊婦において、分娩様式と新生児アウトカムを調査するため、後方視的研究が行われた。
対象となったのは、イタリア北部にある12の病院です。
2020年3月20日までの期間に、SARS‐CoV‐2感染した妊婦で、入院・出産したケースを対象としています。
データは、母親の背景情報、医学的または産科的合併症、妊娠経過、臨床徴候と症状、 新型コロナウイルスの治療、分娩様式、新生児データおよび母乳栄養に関して、臨床記録から方法を集めた。
結果
参加施設において、新型コロナウイルス感染者で分娩したのは42名であった。
分娩様式
- 経膣分娩24/42 (57.1% [95 CI, 41.0‐72.3])
- 選択的帝王切開18/42 (42.9% [95%CI, 27.7‐59.0])
の症例で実施した
診断と治療について
診断と治療の情報は以下の通りでした:
- 肺炎:19/42 (45.2% [95%CI, 29.8‐61.3])
- 酸素投与; 7/19 (36.8% [95%CI, 16.3‐61.6])
- ICU入室; 4/19 (21.1% [95%CI, 6.1‐45.6])
感染が分娩後に判明したため、マスクなしで授乳した2人の女性がいた。この女性の新生児はSARS‐Cov‐2のPCR陽性で、感染ありと判断された。
1例では、新生児は経腟分娩後に陽性であった。
結論
分娩後感染症を100%確実に除外することはできないが、これらの知見は経腟分娩でも、必ずしも新生児へSARS‐Cov‐2の水平感染が起こるとは限らないことが示唆される。
感想と考察
これまでのデータをまとめると、以下のようになります。
3月上旬までは、新型コロナウイルスに感染した妊婦から出生する新生児で、感染する例はいませんでした。しかし、その後、徐々に新生児の感染例が報告されつつあります。また、最新の論文では出生した新生児の新型コロナウイルスに対するIgM抗体の上昇が確認されており、垂直感染を来す可能性も示唆されています。
1〜2月時点の中国からの報告では、帝王切開がほとんどでしたが、4月以降は経膣分娩の報告も出てきています。
今回の場合、経膣分娩の場合、42%(10/24)が母乳栄養をしています。母乳栄養を行う場合、母にマスク着用を基本方針としていたようです。しかし、2名の経産婦は分娩後に新型コロナウイルス感染が判明したため、最初はマスクを着用していなかったようです。このためか、この2名の新生児は、新型コロナウイルスに感染してしまったようです。
基本的に母乳栄養は安全でしょうが、マスクの着用など、感染のリスクを減らす方法を考慮する必要があるでしょう。
まとめ
今回は、イタリアにおいて、新型コロナウイルスに感染した妊婦とその新生児42例の症例集積です。
このうち3例が周産期に新生児に感染しています。母乳栄養の際には、マスクをつけるなど、感染予防の配慮が必要でしょう。
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