今回は、アメリカにおいて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック時に、小児病院にで検出される身体的虐待の量と重症度を見ています。
例年と比較してどうだったのでしょうか。
- 新型コロナウイルスの流行と虐待を調査
- 子ども病院で検出される虐待の数はむしろ減っていた
- 真の減少かは疑問が残り、解釈は慎重になる必要がある
2021年3月に公表されたようです。
新型コロナウイルス流行時の身体的虐待は?[アメリカ編]
研究の背景/目的
景気後退や自然災害は、子どもの身体的虐待(CPA)の増加と関連しています。
私たちの目的は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック時に、小児病院における身体的虐待の量と重症度を、例年と比較することでした。
研究の方法
Pediatric Health Information System(PHIS)(米国の52の小児病院の管理データベース)において、5歳以下の小児を対象とした救急科(ED)および入院患者を対象とした後向コホート研究を実施した。
全体的な傾向を把握するために、2020年1月1日から8月31日までの身体的虐待の受診量を、過去の同時期(2017年~2019年)の受診量と比較した。
また、COVID-19パンデミック期間(2020年3月16日~8月31日と定義)における身体的虐待の遭遇の重症度を、例年(2017年~2019年)の同時間枠と比較しました。
線形回帰モデルを用いて差の差分分析を行った。
評価したモデルは以下の通りである:
- 2020年3月とそれ以前の年を比較したパンデミック発症時のCPA遭遇量の差
- 2020年とそれ以前の年を比較した身体的虐待の変化率の差
研究の結果
3月16日に対応する2020年第10週の小児病院におけるEDおよび入院患者の全原因、全体のエンカウント量に急激な減少が見られた。
2020年とそれ以前の年を比較しても、子どもの身体的虐待への遭遇の傾向の切片や傾きに有意差は見られませんでした。
重症度は例年と同様であり、頭部外傷を虐待した乳児の割合、1歳から5歳までの小児のICU使用率、または院内死亡率に有意差はありませんでした。
COVID-19のパンデミックでは乳児のICU利用が減少し、1~5歳児の受傷パターンに変化が見られました(骨折の割合が高い
結論
身体的虐待の真の減少を反映しているのかもしれませんが、その代わりに、身体的虐待を検出するためのインフラが損なわれているか、あるいはパンデミックの身体的虐待への影響が遅れていることを反映しているのかもしれません。
考察と感想
パンデミックによる学校閉鎖によって家庭にいる時間が長くなるため、身体的な虐待はいろんな学術団体や公的機関から懸念されています。
一方で、この研究ではそういった傾向がなく、著者らも説明ができない状態でした。
この著者らもdiscussionで見解を述べていますが、
- 虐待は本当に減少した
- 虐待を検出できていない
- この研究期間以降に増えたのかも
などが挙げられています。
研究はICD-10を中心に行われており、きちんと虐待が拾えていない懸念はあります。それと、虐待と認定されるには受診しないと行けなくて、単に受診控えが生じただけなのかもしれません。とすると、このデータをみて、安心するのは難しいようにも思います。
まとめ
この研究では、アメリカにおいて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック時に、小児病院にで検出される身体的虐待の量と重症度を見ています。
例年と比較して、検出量は減っていたようですが、本当に虐待の数が減っていたのかは、このデータでは不十分と考えられます。
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