新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した妊婦と、そうでない妊婦の周産期のアウトカムを比較したコホート研究を紹介します。
- JAMA pediatricsからの報告
- 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した妊婦と、そうでない妊婦の周産期のアウトカムを比較したコホート研究でした。
- 妊婦の新型コロナウイルス感染は、妊婦および新生児の周産期の合併症や死亡率のリスク上昇と関連していたようです。
Villar J, Ariff S, Gunier RB, et al. Maternal and Neonatal Morbidity and Mortality Among Pregnant Women With and Without COVID-19 Infection: The INTERCOVID Multinational Cohort Study. JAMA Pediatr.2021;175(8):817–826. doi:10.1001/jamapediatrics.2021.1050
2021年4月にJAMA pediatricsから公表されたようです。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した妊婦はとその新生児と、その後の経過について[アメリカ編]
研究の背景/目的
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と転帰との関連について、非感染の妊婦と比較した詳細な情報が求められている。
本研究では、妊娠中のCOVID-19が母体および新生児の転帰に及ぼすリスクを、COVID-19のない妊婦と比較して評価した。
研究の方法
本コホート研究は、2020年3月から10月にかけて行われ、18か国43施設が参加した。
バイアスを最小化するために、感染妊婦が特定された直後に、妊娠・出産のどの段階でも、同じ医療レベルで、マッチしない連続した2人の非感染妊婦が登録された。
女性と新生児は退院まで追跡調査された。
妊娠中のCOVID-19は、新型コロナウイルスの検査室での確認および/またはレントゲンによる肺の所見、あるいは2つ以上の定義済みのCOVID-19症状によって決定された。
主要評価項目は,(母体および重度の新生児・周産期)罹患率および死亡率の指標であり,これらの指標の個々の構成要素が副次的評価項目であった。
これらのアウトカムのモデルは、国、調査開始月、母親の年齢、および既往歴で調整した。
研究の結果
COVID-19の診断を受けた妊婦706人とCOVID-19の診断を受けていない妊婦1424人が登録され、いずれも人口統計学的特性はほぼ同様であった(平均[SD]年齢、30.2[6.1]歳)。
妊娠初期の過体重は、COVID-19診断を受けた女性323名(48.6%)とCOVID-19診断を受けていない女性554名(40.2%)に見られた。
COVID-19診断を受けた女性は,
- 妊娠高血圧腎症/子癇症(相対リスク[RR],1.76;95%CI,1.27-2.43)
- 重症感染症(RR,3.38;95%CI,1.63-7.01)
- 集中治療室入室(RR,5.04;95%CI,3.13-8.10)
- 母体死亡率(RR,22.3;95%CI,2. 88-172)
- 早産(RR、1.59;95%CI、1.30-1.94)
- 医学的適応による早産(RR、1.97;95%CI、1.56-2.51)
- 重度新生児罹患率(RR、2.66;95%CI、1.69-4.18)
- 重度周産期罹患率・死亡率(RR、2.14;95%CI、1.66-2.75)
などのリスクが高い傾向にあった。
(持続時間を問わない)発熱と息切れは、重度の母体合併症(RR, 2.56; 95% CI, 1.92-3.40)および新生児合併症(RR, 4.97; 95% CI, 2.11-11.69)のリスク増加と関連していた。
COVID-19の診断を受けた無症候性の女性は、母体の合併症の率(RR, 1.24; 95% CI, 1.00-1.54)と子癇前症(RR, 1.63; 95% CI, 1.01-2.63)のリスクのみが高いままであった。
陽性と判定された女性(rtPCRで98.1%)のうち、54人(13%)の新生児が陽性であった。
帝王切開での出産(RR,2.15;95%CI,1.18-3.91)ではなく,母乳栄養なし(RR,1.10;95%CI,0.66-1.85)が新生児の検査陽性リスクの増加と関連していた。
結論
今回の多国籍コホート研究では、COVID-19の診断を受けた妊婦と受けていない妊婦を比較した。
妊娠中のCOVID-19は、母体の重篤な罹患率・死亡率および新生児合併症の一貫した大幅な増加と関連していた。
この知見は、妊娠中の人や臨床医に対して、推奨されるすべてのCOVID-19予防策を厳格に実施するよう注意を喚起するものである。
考察と感想
妊娠中の新型コロナウイルス感染は、そうでない場合と比較して、母体および新生児の有害な転帰のリスクをどの程度変化させるのかをみています。
18カ国の2130人の妊婦を対象とした大規模な多国籍コホート研究ですが、新型コロナウイルス感染と診断された妊婦は、複合的な母体の合併率と死亡率の指標のリスクが高かったようです。
また、診断を受けた女性の新生児は、診断を受けていない新生児と比較して、重度の新生児の合併症や重度周産期罹患率・死亡率指数が高い傾向にあったようです。
妊婦の新型コロナ感染のリスクを推定した論文で、非常に重要な見解と思います。
まとめ
今回は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した妊婦と、そうでない妊婦の周産期のアウトカムを比較したコホート研究でした。
妊婦の新型コロナウイルス感染は、妊婦および新生児の周産期の合併症や死亡率のリスク上昇と関連していたようです。
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
医学書:小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/12/21 02:10:50時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
医学書:小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
noteもやっています
当ブログの注意点について