2020年2月17日に、中国の深圳市(Shenzhen)において認められた小児のCOVID-19の症例報告が発表されたので、そちらの英語の要約を解説していこうと思います。
様々な情報が徐々に出てきていますが、子どものCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の情報は非常に限られています。
今回の症例集積は、この時点では非常に重要な報告と思いますので、こちらで紹介させていただきます。
小児における、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)34例の症例集積が公表されたようです。原著は中国語のようですが、英語の要約でも十分な情報量と思います。
小児の症例数も少しずつ増えてきたようで、私も文献検索しながら、情報をまとめていければと思います。https://t.co/lsbgZbt7VF
— Dr. KID (@Dr_KID_) February 19, 2020
- COVID-19 (新型コロナウイルス感染症) の小児の34症例
- 8割が家族内感染、湖北省への旅行歴 or 滞在歴
- 発熱は半数、咳は4割ほど
- 重症例はなく、軽症が大半
- 基礎疾患はなくとも、感染している
- 血液検査は非特異的で、3割でLDH > 400 IU/L
- CTが早期診断に有用?(詳細不明)
- 治療は、LopinavirやRitonavirが使用
- IVIGやステロイド使用なし
- 全員が退院
症例集積の概要
今回は、RT-PCRで確認された、COVID-19 (新型コロナウイルス感染症) の34例の小児の症例集積となります。
期間としては、1月19日〜2月7日に、中国の深圳市(Shenzhen)の病院で確定診断された小児の症例を集積したデータとなります。
感染者の年齢と性別は?
合計で34人のデータが報告されています。感染した小児の
- 年齢:8歳11ヶ月(中央値)
- 男女比:14 : 20
でした。
家族内感染が多い?
感染した小児34人中28名が(82%)、家族内にCOVID-19 (新型コロナウイルス感染症) の感染者がいたようです。
旅行歴や居住歴は?
武漢市のある湖北省(Hubei)への旅行歴や滞在歴ですが、34人中26名(76%)が該当したようです。
重症度は?
感染者は全員、基礎疾患は特にない健常の小児のようです。
34名の重症度ですが、以下の通りでした:
重症 | 0/34 | 0% |
中等症? (commonと表現) |
22/34 | 65% |
軽症 | 9/34 | 26% |
症状なし | 3/34 | 8.8% |
症状は?
発熱や咳といった症状が多かったようで、以下の通りでした:
症状 | 割合 | % |
発熱 | 17/34 | 50% |
咳 | 13/34 | 38% |
発熱した患者は半分程度のようだったようです。咳が多いという成人での報告例もあるようですが、小児の場合は38%のようです。
CT所見は?
正確なデータはりませんが(Nは?)
- 多発する斑状または結節状のすりガラス陰影(gorund-glass opacity)
- 浸潤影
が、胸膜下や外側区域に認めた。初期診断に有用かもしれない?と著者らは記述しています。
血液検査は?
血液検査結果は以下の通りでした:
白血球 | 正常 | 28/34 (82%) |
低下 (< 4 x 10(9)/L) | 1/34 (3%) | |
上昇 (> 10 x 10(9)/L) | 5/ 34 (16%) | |
CRP | 上昇 | 1/34 (3%) |
ESR | 上昇 | 5/34 (16%) |
プロカルシトニン | 上昇 | 5/34 (16%) |
D-dimer | 上昇 | 3/34 (10%) |
LDH | 上昇 > 400 IU/L | 10/34 (32%) |
血液検査異常はないことが多く、これで判断するのは難しそうです。強いていうと、LDHの上昇が特徴かもしれません。
治療は?
半分以上の小児が治療を受け、抗ウイルス薬(LopinavirやRitonavir)が使用されていたようです。
薬 | 割合 |
Lopinavir Ritonavir |
20/34 (64%) |
ステロイド | 0/34 (0%) |
免疫グロブリン | 0/34 (0%) |
ステロイドや免疫グロブリンは使用されていなかったようです。
予後は?
入院した34名の小児は予後良好で、全員、無事に退院できたようです。
感想と考察
34名の症例集積ですが、いくつか貴重なデータを提示していると思います。
まず、家族内感染の割合が8割と高く、さらに武漢市のある湖北省(Hubei)への旅行 or 滞在歴がある方が高い点です。
また、症状は、約半数は発熱、4割が咳でした。大人と比較すると、これは低いのかもしれません。
血液検査はあまり特異的なものはなく、強いていうとLDHが400以上となった症例が3割ほどでした。
著者らはCTが早期発見に役立つのかもといっていますが、詳細の確認ができていません。
治療はまだ手探りなのでしょうが、LopinavirやRitonavirといったHIV感染治療の抗ウイルス薬が使用されており、ステロイドやIVIGは使用されていなかったようです。
まとめ
中国の深圳市(Shenzhen)におけるCOVID-19 (新型コロナウイルス感染症) の34症例の報告です。
小児の8割は家族内感染しており、さらに武漢市のある湖北省(Hubei)への旅行 or 滞在歴があったようです。
症状は、発熱が半数、咳が4割で、血液検査は3割でLDHの上昇を認めています。
治療は、LopinavirやRitonavirといった抗ウイルス薬が使用されており、ステロイドやIVIGの使用例はなかったようです。
全員が無事、退院できているようです。
- COVID-19 (新型コロナウイルス感染症) の小児の34症例
- 8割が家族内感染、湖北省への旅行歴 or 滞在歴
- 発熱は半数、咳は4割ほど
- 重症例はなく、軽症が大半
- 基礎疾患はなくとも、感染している
- 血液検査は非特異的で、3割でLDH > 400 IU/L
- CTが早期診断に有用?(詳細不明)
- 治療は、LopinavirやRitonavirが使用
- IVIGやステロイド使用なし
- 全員が退院