- 急にオットセイの鳴き声のような変な咳がでてきました
- 呼吸を吸うときに、ゼーゼーと音がします
などで、慌てて受診されるケースが多いです。
「クループ」と言われても聞きなれない病名だと思いますので、今回はわかりやすく説明していこうと思います。
クループ症候群について
「クループ」は正確には「クループ症候群」といいます。
クループ症候群は、別名「喉頭気管炎」ともいわれています。
このクループ症候群は、風邪がきっかけで、喉の奥にある空気の通り道が狭くなり、空気が十分吸い込めなくなった状態をいいます。
独特の咳(犬の吠える咳、オットセイの鳴き声のような咳)が出るのが特徴です。
このため、実は診察室に入る前から、咳の音で『クループの子がいるな』と分かることがあります。
クループの症状がひどくなると、ゼーゼーしたり、胸をへこませるような呼吸(陥没呼吸)を起こし、呼吸状態が悪化することがあるので注意が必要です。
クループ症候群の原因
クループ症候群はウイルス感染で起こります。
パラインフルエンザウイルス、インフルエンザ、RSウイルス、アデノウイルスなどのウイルスが原因として多いです。
乳幼児にクループが多い理由
クループが起こりやすい年齢は生後6ヶ月〜4歳です。
これは、乳幼児の気管の構造が、大人とは異なるからです。
上のイラストを見てください。
左が成人の空気の通り道で、右側が小児の空気の通り道です。
子どもの空気の通り道はもともと細く、感染時にさらに狭くなるため、クループになりやすく、独特な咳が出るのです。
クループ症候群の症状について
典型的には、『咳、鼻水など風邪症状が出てきたかな?』と思ったら、特有の咳がでます。
犬の吠えるような咳、オットセイ様の咳が特徴です。
ひどくなると、息を吸うときにヒューヒューいうこともあります(吸気性喘鳴)。
これらの症状は、48-72時間程度持続し、自然と軽快することが多いです。
クループ症候群の重症度
普段は診察しながらクループ症候群の重症度を見極めています:
重症度によって行う治療も変わってきます。中等症や重症であれば、入院を検討します。
クループ症候群の診断に検査は必要ですか?
通常は検査不要です。 病歴と身体診察で診断をくだします。
泣いたり不機嫌になると、クループの症状が悪化しやすいため、余分な検査は行わない施設がほとんどです。
レントゲンでは声門下の狭窄を示す「鉛筆サイン」という所見を認めますが、必ずしも必要ではありません。
クループ症候群の治療について
軽症であれば、ステロイド内服(デキサメサゾン(デカドロン) 0.15-0.60 mg/kg)を行い、様子をみます。
数日程度で軽快することがほとんどです。
ステロイドは抗炎症作用があるため、空気の通り道の浮腫みや炎症を軽減させてくれます。
吸入ステロイドについて
デキサメサゾンの吸入 (0.5 mL (2 mg)) を行なっている施設もあります。
吸入ステロイド(パルミコード 0.5mg-2mg)の吸入も、ステロイドの飲み薬と同じくらいの効果があるといわれています。
中等症以上の場合
中等症以上の場合は、吸入薬(ボスミン)とステロイド内服を併用します。
治療への反応が悪い場合は、呼吸が苦しそうな時は、入院が必要になることもあります。
(ですが、入院が必要なレベルのクループはそれほど多くありません)
自宅でのケアのポイント
以下の3点がホームケアのポイントです:
- 加湿をしてください
- 安静を心がけましょう
- 寝る姿勢に注意しましょう
肩枕について
ゼーゼーがひどい時は、肩に枕をしてあごを少しあげるとよいでしょう。
ちょっと大げさかもしれませんが、下の図のように肩に枕をして、顎をあげると喘鳴は軽快します。