小児であっても、感染症やアレルギーなどを契機に慢性の副鼻腔炎になってしまうことがあります。
副鼻腔炎に慢性的な炎症が生じるため、鼻汁が続いたり、後鼻漏、咳が長く続くことがあります。
鼻洗いの有効性は、風邪や急性鼻副鼻腔炎、喘息などでも検討されています。
使用される液体としては、高張食塩水(3.5%)や等張食塩水(0.9%)が多いですが、これらの有効性を検証した研究は多くはありません。
そこで、今回の研究が行われました。
慢性副鼻腔炎は、長引く咳などのある小児のうち
- 2〜6歳:73%
- 6〜10歳:74%
- 10歳以上: 38%
が罹患しているとも考えられています。風邪の5〜10%ほどで合併するリスクがある重要な疾患とも言えます。
研究の目的
今回の研究は、
- 3〜16歳
- 慢性副鼻腔炎の診断あり、治療されている
- 1993-1994年の夏期
- 慢性疾患なし
- ステロイドや抗菌薬は使用していない
を中心にランダム化比較試験が行われました。
治療について
治療は、滅菌された
- 0.9%生理食塩水(等張)
- 3.5%生理食塩水(高張)
を使用しています。点鼻は鼻に10滴(約1ml)ほどの点鼻を1日3回、4週間継続してもらっています。
アウトカムについて
アウトカムは、臨床スコアと画像所見のスコアの両方から見ています。
臨床スコアは、咳と鼻汁を数値化した指標を使用しています。
スコア | 1 | 2 | 3 | 4 |
咳 | なし | 軽度 | 中等度 | 重度 |
鼻汁 | なし | 漿液性 | 膿性 |
画像所見は主に上顎洞の所見を参考に、
1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
正常 | 軽度 粘膜肥厚 |
? | 重度 (>4mm) 粘膜肥厚 |
完全閉塞 |
と評価しています。(なぜか3点目の記載がない)
両側で10点満点のようです。
研究結果と考察
最終的に30人の患者が解析対象となり、各治療グループには15人ずつのでした。
咳のスコア
高張 | 等張 | |
治療前 | 3.6 | 3.53 |
治療後 | 1.6 | 3.33 |
咳のスコアは高張食塩水を使用したグループでのみ、2点ほど減少しました。
鼻汁のスコア
高張 | 等張 | |
治療前 | 2.86 | 2.66 |
治療後 | 1.6 | 1.53 |
鼻汁に関しては、両方とも同じような推移でして、治療前後で1点ほど改善しています。
画像所見のスコア
画像所見のスコアですが、
高張 | 等張 | |
治療前 | 8.06 | 8.13 |
治療後 | 2.66 | 7.86 |
高張食塩水の方がスコアは大きく改善しています。
考察と感想
イスラエルで行われた研究では、小児の慢性副鼻腔炎において、等張食塩水と比較して、高張食塩水の方が咳や画像所見のスコアが大きく改善していました。一方で、鼻汁スコアについてはそれほど変わらない印象です。
盲検化も二重でされていますし、患者数のばらつきも少なく、割と綺麗な結果だと思いました。
強いて言うなら、食塩水の濃度の違いにより、盲検化が崩れている可能性はありえるかもしれません。実際に鼻洗いをするとわかると思いますが、食塩の濃度が0.9%→3.5%の上げると、塩っぽさが大きく変わるので、被験者は分かってしまうかもしれないですね。
ですが、盲検化が仮に崩れていたとしても、レントゲン所見に反映することは少ないでしょうし、咳と鼻汁で結果が異なる点は説明できない気もしています。
あまり疑心暗鬼になりすぎないようにしようと思いました。
まとめ
今回のイスラエルで行われた研究では、小児の慢性副鼻腔炎において、等張食塩水と比較して、高張食塩水の方が咳や画像所見のスコアが大きく改善していました。一方で、鼻汁スコアについてはそれほど変わらない印象です。
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