今回は、小児の慢性ITPにおいて、ダプソンによる治療の報告を紹介しあす。
最初に成人の慢性ITPでの成功例がモデルとなり、小児へも使用してみようという流れになっていたようです。
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
背景・目的
慢性ITP患者に対して、ダプソンを使用して血小板数の推移を観察した。
方法
慢性ITPで血小板数が50×10^9/L未満の患者をダプソン1~2 mg/kg/日で治療した。
この90例(成人55名、小児35名)のデータを提示した。
実際の投与は以下の通りの記載がありました:
Dapsone was used at a dose of 1–2 mg/kg/d for at least 3 months unless stopped earlier due to side effects.
結果
良好な反応は57人 (63.3%) の患者で観察できた。
治療開始から反応性を確認するまでの平均時間は3.5か月(1~9の範囲)であった。
ダプソン治療の平均期間は10.4か月(4から14の範囲)であった。
全体の奏効率は、小児で65.7%、成人で61.8%であった。
治療中止を必要とする副作用は、 3人 (2%) の患者で観察できた。
結論
これら結果は、ダプソンが子供と成人の両方で慢性ITPに対する効果的で、安価で、良く耐えられる治療であり、ステロイド治療が失敗した患者に対し考慮できることを示す。
考察と感想
小児の参加者は35名で、そのうち奏効したのは65.6%なので、23名に対して反応性ありと判断したようですね。
論文中の定義によると、
- CR: 血小板 > 10万/μL
- PR: 血小板 5〜10万/μL
のようですね。前回、紹介していたステロイドパルスやリツキシマブとは異なる基準ですね。
個人的にはダプソンを使用した経験がないので、なかなかハードルの高さを感じてしまいました。最近では、IgAVでの使用などもあり、興味深い薬ではあります。
ITPでの詳しいメカニズムはよくわかっていないようですね。
副作用に関しては、1名で溶血を認めたようですね。詳しい経過は述べられていませんでした。
まとめ
今回は、慢性ITPにおいて、ダプソンを投与した成人でのランドマーク的な研究です。
サンプル数は少ないですが、6割くらいの小児で血小板数が回復したようです。
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
医学書:小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/12/21 02:10:50時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
医学書:小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています