科学的根拠のある子育て・育児

下痢のときに母乳をやめるべきでしょうか?[ミャンマー編]

  •  子供が下痢をしました。母乳はやめたほうがいいですか?
  •  下痢があるので、母乳をやめて経口補水液を与えたほうがよいですか?

まだ母乳を飲んでいる乳幼児が、下痢で受診した際に、保護者からよく相談されます。

結論からいうと、母乳が飲めているなら、そのまま飲ませてもらって大丈夫です。わざわざ、経口補水液に切り替える必要はありません。

その根拠を、今回はご紹介しようとおもいます。

ポイント

  •  急性胃腸炎において、母乳をつづけるべきか検討した研究
  •  母乳をやめると、下痢の回数と量は増える印象
  •  母乳をやめるメリットはあまりなさそう
マミー
マミー
下痢をした時って、母乳をやめる必要ありますか?

Dr.KID
Dr.KID
過去の論文をみてみましょう。

オープンアクセスです↓↓

研究の概要

今回の研究は1985年にベトナムで行われたランダム化比較試験です。

対象となったのは、6〜24ヶ月の乳幼児で、下痢がはじまって48時間以内で、母乳を飲んでいて、哺乳瓶は使用していない人が対象です。

治療について

治療は、

  •  経口補水液のみ
  •  経口補水液 + 母乳

のいずれかをランダムに割つけています。

結果

結果は以下の通りでした:

母乳 なし あり
下痢の量
(ml/kg/patient)
115.8
(14.5)
89.2
(10.0)
下痢の回数 17.4
(2.3)
12.1
(1.1)
嘔吐 15.2
(8.5)
22.9
(10.9)
下痢の期間 45.7
(3.9)
43.3
(5.0)

母乳を続けた方が、下痢の量や回数は少なくなるようです。一方で、嘔吐の回数は増えていますが、下痢の期間はかわりません。

Dr.KID
Dr.KID
多少、嘔吐をする機会は増えるかもしれませんが、下痢の量や回数は減り、下痢の期間はかわらないので、デメリットは少なそうです。

 感想と考察

下痢のときに母乳をやめましょうという医師もいるようです。

胃腸炎で腸が荒れてしまい、乳糖やタンパク質などが十分に分解できず、下痢になることを恐れて指導されているケースが多いのでしょう。

しかし、このデータをみると、下痢のときに母乳を与えていたほうが、下痢の量も回数もむしろ減っています。

Dr.KID
Dr.KID
母乳をやめるメリットはほとんどなさそうです。

まとめ

今回の研究は、乳幼児が下痢のときに母乳をやめるべきか否か検討したRCTです。

母乳を続けたほうが、下痢の回数や量は減る傾向にあり、母乳をやめて経口補水液に切り替えるメリットはほとんどなさそうです。

マミー
マミー
下痢があっても、母乳を続けて良さそうなのデータなのですね?

Dr.KID
Dr.KID
嘔吐がひどくなく、飲める状況であれば、無理に母乳をやめる必要はないですよ!

まとめ

  •  急性胃腸炎において、母乳をつづけるべきか検討した研究
  •  母乳をやめると、下痢の回数と量は増える印象
  •  母乳をやめるメリットはあまりなさそう

 

Dr. KIDの書籍(医学書)

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

 

新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/12/21 02:10:51時点 Amazon調べ-詳細)

 

Noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

 

 

 

当ブログの注意点について

Dr.KID
Dr.KID
当ブログは医療関係者・保護者の方々に、科学的根拠に基づいた医療情報をお届けするのをメインに行なっています。参考にする、勉強会の題材にするなど、個人的な利用や、閉ざされた環境で使用される分には構いません。

Dr.KID
Dr.KID
一方で、当ブログ記事を題材にして、運営者は寄稿を行なったり書籍の執筆をしています。このため運営者の許可なく、ブログ記事の盗用、剽窃、不適切な引用をしてメディア向けの資料(動画を含む)として使用したり、寄稿をしないようお願いします。

Dr.KID
Dr.KID
ブログの記載やアイデアを公的に利用されたい場合、お問い合わせ欄から運営者への連絡お願いします。ご協力よろしくお願いします。

 

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。