ドンペリドンはベルギーのJassen社で開発された制吐薬で、現在も日本で小児・成人に使用されています。
今回も日本国内の研究をピックアップしました。少し古い研究になりますが、1980年に行われたランダム化比較研究になります。
Yashiro K, Kojima K, Saito K, et al. Effects of domperidone suppository on nausea and vomiting [in Japanese]. Jpn J Pediatr. 1981;34:1137-1139.
研究の方法
今回の研究は、1980年に日本国内の15の病院において、生後6ヶ月〜15歳で
- 周期性嘔吐症
- 胃腸炎による嘔吐
- 抗がん剤による嘔吐
を対象に、ドンペリドンの有効性をランダム化比較試験で検討しています。
治療について
治療はドンペリドン vs プラセボでして、ドンペリドンは坐薬タイプで
- ドンペリドン 30mg
- ドンペリドン 10mg
を患者の体重にあわせて処方しています。これらの規格と同じプラセボを処方しています。
10 mg製剤は主に3歳未満、30mg製剤は3歳以上で使用していますが、体重を参考にして使い分けしていたようです。
アウトカムについて
研究のアウトカムですが、
- 臨床的な効果判定:悪化・改善せず・やや改善・改善・著名改善の5段階
- 主治医による有用性の判定
- 副作用
としています。
研究結果と考察
最終的に208人が解析の対象となりました。内訳は、
- ドンペリドン 108人
- プラセボ 100人
でした。男児が6割ほど、2歳以下が大半です。胃腸炎や周期性嘔吐がほとんどで、抗がん剤による嘔吐は数名でした。
総合判定に関して
悪化・改善せず・やや改善・改善・著名改善の5段階で有効せいを判定しています。
10 mg | 30 mg | |
ドンペリドン | 80% | 81% |
プラセボ | 44.6% | 45.2% |
改善以上を有効性ありと判定していますが、ドンペリドンを使用したグループのほうが有効性が高そうな印象です。
それぞれの症状に関して
嘔吐、吐き気、食欲不振の改善効果をみていきましょう。
まずは嘔吐ですが、以下の通りでした:
10 mg | 30 mg | |
ドンペリドン | 80.4% | 84.3% |
プラセボ | 44.2% | 45.5% |
改善以上を有効性ありと判定していますが、ドンペリドンを使用したグループのほうが嘔吐は改善していそうな印象です。
吐き気ですが、以下の通りでした:
10 mg | 30 mg | |
ドンペリドン | 79.1% | 80.4% |
プラセボ | 46.7% | 46.0% |
ドンペリドンを使用したグループのほうが、吐き気が改善していそうな印象です。
最後に食欲不振ですが、以下の通りでした:
10 mg | 30 mg | |
ドンペリドン | 77.8% | 80.7% |
プラセボ | 45.5% | 43.1% |
ドンペリドンを使用したグループのほうが、食欲が改善していそうな印象です。
副作用について
副作用にに関しては、ドンペリドンを投与されたグループにはなく、プラセボ群で1例のみ手足のしびれを訴えたようです。
考察と感想
こちらの研究結果によると、ドンペリドンは嘔吐に関連した症状に改善効果がありそうな印象でした。
一方で、「改善」の指標が主観的な判断で、どのくらいバイアスが混入しているのか、疑問を感じています。
例えば、2歳未満のお子さんでも吐き気や食欲を評価していますが、どれだけ真実を反映したものなのか、疑問が残ります。
昔の研究なので、仕方がない面もなるでしょうが、現代で行うとすれば最終嘔吐までの期間や、嘔吐回数、経口摂取量など、もうすこし定量的な評価を行いたいところですね。
まとめ
今回の研究では、、ドンペリドンは嘔吐・吐き気・食欲などの症状に改善効果がありそうな印象でした。
しかし、研究のアウトカムが主観的なものが多く、信頼性にやや疑問が残ります。定量的なアウトカムにして、類似のデザインで再検証が必要とおもいます。
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