前回は2011年に行われたコクランのシステマティック・レビューの結果をご紹介してきました。
1970年前後にもいくつか研究が行われていましたが、マニアックな雑誌というのもあり、なかなか文献にたどり着けないと思っていました。しかし、最近、友人から文献をいただけたので、こちらからご紹介させていただければと思います。
Van Eygen, et al. A double-blind comparison of domperidone and metoclopramide suppositories in the treatment of nausea and vomiting in children. Postgraduate Medical Journal. 1979;55: 36-39.
制吐剤と聞くと、国内ではドンペリドン(ナウゼリン®︎)やメトクロプラミド(プリンペラン®︎)あたりがよく使用されています。
過去の硏究によると、ドンペリドンはメトクロプラミドやプラセボより有効性が高く、さらにドンペリドンは脳血管関門を通過しづらく、神経系の副作用が起こりづらいと考えられています。
今回の硏究は、小児においてドンペリドンとメトクロプラミドがどの程度有効だったかを検証しています。
研究の方法
今回の研究は、1978年にベルギーで行われた二重盲検ランダム化比較試験で、
- 胃腸炎による嘔吐
- 2〜6歳
を対象に研究が行われています。
治療は、
- ドンペリドン
- メトクロプラミド
- プラセボ
のいずれかをランダムに割りつけています。
アウトカムは、
- 追加投薬の必要性
- 症状の軽快
あたりをみています。
研究結果と考察
最終的に60人が研究に参加し、
- 平均年齢は約3歳
- 男女比は女性が6割
ほどでした。ドンペリドン、メトクロプラミド、プラセボのいずれかを20人ずつ割り当てています。
追加投薬の必要性
追加投薬 | ドンペリドン | メトクロプラミド | プラセボ |
1回 | 12 | 6 | 2 |
2回 | 5 | 13 | 9 |
3回 | 3 | 1 | 9 |
ドンペリドンのほうがメトクロプラミドより、メトクロプラミドのほうがプラセボより追加投薬の必要性が低そうですね。
間接的な所見になりますが、追加投薬が不要ということは、嘔吐症状が軽快していることが示唆されています。
追加投薬後に嘔吐症状が軽快したのかもみています。(図は論文より拝借)
ドンペリドンのほうがメトクロプラミドより、メトクロプラミドのほうがプラセボより症状が軽快していそうな印象ですね。
考察と感想
今回の研究では、ドンペリドンのほうがメトクロプラミドより、メトクロプラミドのほうがプラセボより嘔吐症状が軽快していそうな印象を受けます。
一方で、アウトカムである症状の指標であったり、時間経過が曖昧で解釈が難しく感じます。
「追加投与」が必要として、どのくらいのインターバルで行われたのか、この論文ではよくわかりません。図でも横軸は時間経過を示唆したいのでしょうが、実際にどのくらいの時間経過かはわかりませんね。
アウトカムも追加投薬の必要性となっていますが、具体的にはどのくらい嘔吐回数が減ったのか、食事や水分量は増えたのか、排便・排尿が増えたのかもわからないです。
定量的な解釈が難しいので、このテーマにおいて、メタ解析につなげることができないままでいます。
まとめ
今回の研究では、ドンペリドンのほうがメトクロプラミドより、メトクロプラミドのほうがプラセボより嘔吐症状が軽快していそうな印象を受けます。
一方で、アウトカムである症状の指標であったり、時間経過が曖昧で、アウトカムの設定にやや問題を感じました。