- ワクチン接種後に赤く腫れ上がったり、熱が出るのが怖いです
- あらかじめ解熱薬を使用すると改善しますか?
ワクチン接種後には、痛みが生じたり、熱が出ることがあるため、解熱薬の使用を希望される方もいると思います。
また、あらかじめこういった副反応が起こらないよう「予防的に解熱・鎮痛薬を」と考える方もいるようですが、実際のところ予防効果は本当にあるのでしょうか。
アセトアミノフェンを使用した研究は複数あり、今回は、0歳の小児において、DTaPワクチン接種直後に使用した研究をご紹介します。
- ワクチン接種後の解熱薬を予防的に投与することの是非を検討した論文
- 発熱や著しい不機嫌のリスクは減る印象
- 抗体獲得への影響は評価されていない
PLoS ONE 6(6): e20102.
アメリカで行われた研究です。
アセトアミノフェンは、ワクチン接種直後に使用すると、長期的に抗体価に影響するか?
研究の背景/目的
発熱は乳児のワクチン接種後によくみられる。
2件のランダム化比較試験で、百日咳ワクチン接種後の発熱予防におけるアセトアミノフェン予防の有効性が実証された。
しかし、米国において、乳児に推奨されている最新のワクチン接種後の発熱予防に対するアセトアミノフェン予防の評価は行われていない。
研究の方法
生後6週から9か月の小児を対象に1:1にランダム化し, 定期予防接種後にアセトアミノフェン(10~15 mg/kg)またはプラセボを最大五回投与した。
主要評価項目は、接種後32時間以内の直腸温が38°C以上であった。
副次アウトカムは,医療利用,乳児の不機嫌,親の仕事の喪失時間であった。
プラセボを投与されていた小児に発熱やアセトアミノフェンの追加投与が必要な症状がみられた場合には、親は治療割り付けの盲検解除を要請することができた。
研究の結果
38°C以上の体温が記録されたのは、アセトアミノフェンにランダム化された小児の14% (25/176) に対し、プラセボにランダム化された小児では22% (37/176) であった(相対リスク [RR] , 0.63;95%信頼区間,0.40-1.01)。
アセトアミノフェンにランダム化された小児は、プラセボにランダム化された小児よりも、不機嫌と報告されること(10%対24%) (RR, 0.42;95%信頼区間,0.25-0.70)、または割付を明らかにして解熱薬の治療を受けること(3%対9%) (RR, 0.31;95%信頼区間,0.11-0.83)と報告される可能性が低かった。
年齢層別解析において、生後24週以上の小児では、アセトアミノフェン群で38°C以上の発熱のリスクが低かった(13%対25%)。
結論
この比較的小規模な試験の結果は,アセトアミノフェンがワクチン接種後の発熱および不機嫌のリスクを低下させる可能性を示唆する。
考察と感想
2010年代に報告された研究ですが、この時期のワクチン接種において、アセトアミノフェンの副反応の予防効果を検討したことがない、というのが研究を行なった動機のようですね。
アセトアミノフェンまたはプラセボは、ワクチン接種後1時間以内に行われ、その後は4、8、12、16時間後に行われたようです。
A | P | |
N | 176 | 176 |
発熱 | ||
> 38度 | 14% | 22% |
> 39度 | 0% | 2% |
受診 | 3% | 6% |
ひどい不機嫌 | 10% | 24% |
発熱の頻度は少し減るかもしれないというデータですね。医療機関への急な受診は、そもそも少ないので比較が難しいようです。
抗体獲得への影響は評価されていないようです。
まとめ
今回は、アメリカで行われた研究で、ワクチン接種後の解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン)の使用が、発熱などの副反応のリスクを軽減するかみています。
ワクチン接種直後に解熱薬を使用したグループは、発熱のリスクはやや低く、著しい不機嫌となる可能性も低かったようです。
一方で、この研究では、過去の研究で懸念されていた抗体獲得への影響は評価されていません。
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