賢明な医療の選択

無症候性の小児に対して、ADHDの治療開始前のスクリーニングとして心電図をしない[Choosing wisely]

今回は、小児のADHDの治療開始前のスクリーニングとして心電図に関してです。

この推奨を「choosing wisely」ではどのように記載されているのか紹介してみようと思います。

ユーキ先生
ユーキ先生
小児のADHDの治療開始前のスクリーニングとして心電図に関して、教えてください

Dr.KID
Dr.KID
Choosing wiselyを見てみましょう。

ポイント

  •  Choosing wisely:小児のADHDの治療開始前のスクリーニングとして心電図
  •  ルーチンでは行わない

American Academy of PediatricsからのChoosing Wisely

無症候性の小児に対して、ADHDの治療開始前のスクリーニングとして心電図をしない[Choosing wisely]

Do not order a screening ECG prior to initiation of attention-deficit/hyperactivity disorder (ADHD) therapy in asymptomatic, otherwise healthy pediatric patients with no personal or family history of cardiac disease.

Many pediatricians obtain ECGs in healthy patients with no personal or family history* of cardiac disease prior to initiating stimulant therapy for ADHD out of fear of triggering an adverse cardiovascular event or worsening a previously undiagnosed cardiovascular disease. However, the probability that such screening will lead to the diagnosis of cardiac disease is low. Furthermore, when ECG abnormalities are identified, they rarely warrant a change in planned ADHD therapy. As a result, obtaining the ECG increases health care costs and can increase stress for both the patient and family.

If there is concern based on the history and physical examination, then a pediatric cardiology referral is a reasonable consideration.

心疾患の既往歴や家族歴のない無症候性の健康な小児患者に対して、ADHDの治療開始前のスクリーニングとして心電図を指示してはいけません。

多くの小児科医は、有害な心血管イベントを引き起こしたり、以前に診断されなかった心血管疾患を悪化させたりすることを恐れて、心疾患の個人的または家族的な既往歴のない健康な患者に、ADHDの治療開始する前に心電図検査を行います。

しかし、このようなスクリーニングで心疾患が診断される可能性は低いと考えられます。さらに、心電図の異常が確認されたとしても、それがADHDの治療計画の変更につながることはほとんどありません。結果的に、心電図を取ることは医療費を増加させ、患者と家族の両方にストレスを与えることになります。

病歴や身体検査で懸念がある場合は、小児循環器科への紹介を検討するのが妥当であろう。

考察と感想

小児のADHDの治療開始前のスクリーニングとして心電図に関してでした。

不要な検査を減らすという意味ではそうだとは思うのですが、日本ですと心電図は比較的簡単にとれますし、対象患者だけですので、それほど悪いことのようにも思えないのですが。アメリカは医療費が高いのもあって、この辺りが徹底している反面、やや極端なのかもしれないと思ってしまいました。

参考文献も読んでみようと思います:

Cooper WO, Habel LA, Sox CM, et al. ADHD drugs and serious cardiovascular events in children and young adults. N Engl J Med. 2011;365(20):1896-1904

Mahle WT, Hebson C, Strieper MJ. Electrocardiographic screening in children with attention-deficit hyperactivity disorder. Am J Cardiol. 2009;104(9):1296-1299

Perrin JM, Friedman RA, Knilans TK; American Academy of Pediatrics, Black Box Working Group, Section on Cardiology and Cardiac Surgery. Cardiovascular monitoring and stimulant drugs for attention-deficit/hyperactivity disorder. Pediatrics. 2008;122(2):451-453

Shahani SA, Evans WN, Mayman GA, Thomas VC. Attention deficit hyperactivity disorder screening electrocardiograms: a community- based perspective. Pediatr Cardiol. 2014;35(3):485-489

American Academy of Pediatrics, Subcommittee on Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder, Steering Committee on Quality Improvement and Management. ADHD: Clinical practice guideline
for the diagnosis, evaluation, and treatment of attention-deficit/hyperactivity disorder in children and adolescents. Pediatrics. 2011;128(5):1007-1022

まとめ

今回は、小児のADHDの治療開始前のスクリーニングとして心電図に関するchoosing wiselyをご紹介しました。

これ以外にも項目が出ているようなので、コツコツと読んでいこうと思います。

 

created by Rinker
¥6,600
(2024/11/21 16:57:28時点 Amazon調べ-詳細)

Dr. KIDの執筆した書籍・Note

医学書:小児のかぜ薬のエビデンス

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

医学書:小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/11/21 01:10:36時点 Amazon調べ-詳細)

Dr.KID
Dr.KID
各章のはじめに4コマ漫画がありますよー!

noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

 

当ブログの注意点について

当ブログは医療関係者・保護者の方々に、科学的根拠に基づいた医療情報をお届けするのをメインに行なっています。参考にする、勉強会の題材にするなど、個人的な利用や、閉ざされた環境で使用される分には構いません。

一方で、当ブログ記事を題材にして、運営者は寄稿を行なったり書籍の執筆をしています。このため運営者の許可なく、ブログ記事の盗用、剽窃、不適切な引用をしてメディア向けの資料(動画を含む)として使用したり、寄稿をしないようお願いします。

ブログの記載やアイデアを公的に利用されたい場合、お問い合わせ欄から運営者への連絡お願いします。ご協力よろしくお願いします。

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。