卵アレルギーとインフルエンザ・ワクチン接種について
ポイントは以下の3点です;
- インフルエンザワクチンには微量の鶏卵成分が含まれてます
- アレルギー症状はでないことがほとんどで、基本的に安全です
- 卵アレルギーのある方は事前に主治医とよく相談しましょう
インフルエンザワクチンに卵の成分があるのはなぜですか?
インフルエンザワクチンは、ワクチンを作る際に鶏卵を使用してウイルスを増殖します。
このため、ワクチンに鶏卵の成分が含まれてしまいます。
この図の通り、インフルエンザウイルスをニワトリの卵で増殖させて、ワクチンを精製しているのです。
精製の過程で、卵成分はかなり除去されているのですが、極微量だけ残ってしまうのです。
このため、インフルエンザワクチンを接種する際は、卵アレルギーのある方は注意が必要といわれています。
ワクチンに含まれる卵成分は非常に少ない
しかし、日本のインフルエンザワクチンに含まれる卵の成分は非常に少ないです。
卵アレルギーの原因となる『オボアルブミン』の量からも明らかです(以下):
- 日本: オボアルブミン濃度 < 0.1〜0.62 ng/mL
- 米国: オボアルブミン濃度 20〜1200 ng/mL
- 欧州: オボアルブミン濃度 20〜650 ng/mL
となっています。
日本のワクチン製造は非常に綿密に行われているため、欧米とは比較にならないくらい少量の卵成分しか入っていません。
これは製造業者の努力の賜物といえます。
体に入るワクチンの液量から換算しても、ワクチン接種で使用する卵の成分は微量で、アレルギー反応を起こす可能性はかなり低いです。
血液検査で卵アレルギーを指摘されている場合
実際の医療現場では、注意点として以下があります;
- CAP-RAST (血液検査)で卵アレルギーがクラス5〜6の強陽性
- 卵のアナフィラキシーの既往がある
この場合は、ワクチン接種に伴ってアレルギー反応を起こすリスクがあるため、注意が必要といわれています(接種してはいけないという意味ではありません)。
ですので、血液検査でクラス5以上、卵を食べてアナフィラキシーを起こしたことがある方は、ワクチン接種について主治医とよく相談されるとよいでしょう。
血液検査が陽性でも、卵を食べてアレルギー症状がなければ、安全に接種できることがほとんどです。
接種してよいかは、かかりつけの医師に相談されるとよいでしょう。
接種前に、ワクチンにアレルギーがあるか検査できますか?
ワクチン液による皮内テストを行い、接種可能か判断している施設もあるようです。
皮内検査の方法ですが ;
- ワクチンの10倍希釈液と食塩水(コントロール用)を用意する
- 皮膚内に液体を少量入れる
- 15-20分後にアレルギー反応(皮膚)をみる
の手順で行われます:
結果は
- 陰性: 膨疹 8mm以下 発赤 19mm以下
- 陽性: 膨疹 9-14mm 発赤 20-39mm
- 強陽性: 膨疹 15mm以上 発赤 40mm以上
を基準に分類します。
陰性であれば1回で全量接種が可能です。
陽性の場合は0.1mlを接種し、30分様子を見た後に残りを接種します。
強陽性の場合はワクチン接種は行わないことが多いようです。
しかし、残念ながらこの検査方法は真にアレルギーかの判断は難しく(つまり正確性が疑問視されており)、AAP(米国小児科学会)を含む多くの学会は推奨していません。
卵アレルギーはインフルエンザワクチンは安全か?
私の知る限りでは、複数の研究が小児で行われていました。
卵アレルギーのあるお子さんにおいて、生インフルエンザ(フルミスト®︎)の安全性をみています。
いずれの研究でも、重篤なアレルギー反応は起こしませんでした。
もう少し症例の蓄積は必要ですが、これまで予測されていたより、卵アレルギーのあるお子さんにも、インフルエンザワクチンは安全に打てるのかもしれません。
国内でも大規模な研究が早く報告されればと思います。