こどもの心筋炎ってどんな病気!?
「心筋炎」とは、その名の通り、心臓の筋肉に起こる炎症です。
こどもの場合、ウイルス感染によって起こるウイルス性心筋炎がほとんどです。
多くはありませんが、川崎病で心筋炎を合併することもあります。
その他には、細菌感染や薬剤などで起こることもありますが、とても稀です。
以下に原因の一覧表を示します:
ウイルス性心筋炎の頻度が圧倒的に高く、アデノウイルス、エンテロウイルス、インフルエンザウイルスが代表的な原因です。
これらのウイルスによる心筋炎の場合、風邪の症状に加えて、嘔吐などの消化器症状がでます。
その後、数時間から数日以内に頻脈や不整脈、心不全を起こすことがあります。
心筋炎を見分けるのは難しい
心筋炎の初期は、ベテランの小児科医ですらかぜと心筋炎を見分けるのは非常に難しいです。
最初は、発熱・寒気・下痢・腹痛・嘔吐など、普段の外来でみる風邪や胃腸炎の症状と区別がつきません。
普通の風邪の子のなかに紛れていることが多いため、かなり診断が難しいです。
私たち小児科医が見分けるポイントとして:
- 診察した時の顔色が悪い
- 手足が冷たい、真っ青
- 呼吸が苦しそう
がヒントになります。
小学生くらいになると、胸痛を訴えることもあります。
診察がとても重要
診察が非常です。
不整脈など、脈拍の異常を認めたり、異常な心雑音を逃さないように注意深くして、はじめて診断できます。
過去に私の指導医が、風邪症状で受診した子供の心音だけ聞いて心筋炎と診断し、小児循環器の専門医から絶賛されていました。
早期発見をすると専門家から大絶賛されるほど、みつけるのが難しい疾患です。
診断方法について
診断方法は、画像と血液検査で行います:
- 胸部レントゲン
- 心電図
- 心臓の超音波
- 血液検査(心筋の酵素の値の上昇を確認します)
を参考にして行います。
これらの検査を組み合わせれば、診断事態はそれほど難しくはありません。
つまり、「心筋炎を疑って検査をする」というプロセスが最も重要です。
小児科外来では90%近くが風邪を含む軽症ですので、軽症をみながらも重症を見逃さない注意深さが必要ともいえます。
心筋炎の治療について
心筋炎は非常に重篤になるケースもあるため、基本的には入院して様子をみます。
ウイルス性の心筋炎には特効薬がないため、対症療法が中心です。
つまり、入院後には安静にして心臓の負担を減らし、呼吸が苦しければ酸素を投与し、心不全の症状がひどければ、利尿薬などを使って心臓の負荷を減らして、回復するのをゆっくり待ちます。
心筋の炎症を止めるために:
- 免疫グロブリン大量療法
- ステロイドパルス療法
- 免疫抑制薬
- インターフェロン治療
を使用することもあります。
しかし、ウイルス性の心筋炎の場合、これらの薬の有効性ははっきりしていません。
心筋炎の予後を教えてください
急性心筋炎の死亡率は非常に高く、10%~25%です。
仮に運良く生存しても、完全に回復して、心臓に問題がなく日常生活を送れるのは30%~50%程度です。
残りの、25%~30%程度は後遺症が残るといわれています。
今後の新しい治療薬や、早期発見の方法が期待されます。
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