- ハンコ注射(BCGワクチン)ってなんで接種するのですか?
- 結核って昔の病気じゃないですか?
- BCG後の腫れってどうしたらいいですか?
と様々な質問があります。
前者2つについては、以下の記事に詳しく記載しています。
簡単に説明しますと、
- 今でも日本では結核の発症は続いている
- BCGワクチンは赤ちゃんの結核を予防する
のため、接種が推奨されています。
一方、BCGワクチンを接種した後、しばらくすると腕が腫れてきてしまうことがあります。
BCGワクチン接種とコッホ現象をメインに解説していきましょう。
結核について
『結核』は『結核菌』に感染することで起こる病気です。
結核の特徴は、長引く咳、血痰、熱が続く病気で、長期的な治療が必要です。
日本では、お年寄りや衛生環境の悪い地域で流行しており、毎年2万人程度の新規に結核患者が発生しています。
結核菌は空気感染する
結核菌は空気感染をします。
空気感染とは、同じ空間(例えば同じフロア、同じ施設)にいるだけで感染することをいいます。
インフルエンザなどと比較しても、結核菌はかなり広範囲に広がります。
結核菌の侵入をさけるのは、かなり難しい
結核菌を相手にする場合、普通のマスクをしても、普通の換気扇をしても、扉を締めても感染予防の効果が低いです。
結核菌はマスクの隙間を通って感染しますし、普通の換気扇の陰圧では不十分なのです。
(医療者は結核菌の感染予防として、N95という特殊なマスクをします)
このため、病院で結核患者を入院させるには、かなり特殊な設備のある部屋に入れます。
個室は必ず二重扉にし、強い陰圧をかけて結核菌が室外に漏れるのを完全に制御します。
赤ちゃんも結核菌に感染します
結核は大人から子供へ感染することもあります。
特に乳児期は結核菌に感染しやすい時期です。
乳児は免疫力が弱い、つまり結核菌から体を守る力が不十分で感染しやすいのです。
さらに、赤ちゃんは重症化しやすく、粟粒結核や髄膜炎を起こし、重い後遺症が残ることがあります。
結核患者の少ない国ではBCG接種は不要ですが、日本では毎年2万人の新規結核患者が発生しており、乳児期の結核予防のためBCGを接種しています。
BCGワクチン接種は生後1歳まで可能ですが、通常は生後5〜8ヶ月での接種をオススメしいます。
ワクチンは肺結核や結核性髄膜炎などを予防してくれます。
BCGワクチンについて
ここから、BCGワクチンについて説明していきます。
BCGは、結核菌を弱毒化して作った生ワクチンです。
ハンコ注射と俗に言われるスタンプのような針(9つの針があります)で、上腕2カ所に接種します(下図):
BCGは上腕以外に接種しないほうがよいです
確かに、BCG接種をすると、上腕に痕が残ってしまうことがあります。
このため、
『腕でなく、見えにくいお尻にうってください』
とお願いされることが、時々あります。
確かに、BCGワクチンは針で皮膚に染み込ませることで免疫が付きますので、理論上は皮膚であれば、体のどこに接種してもよいでしょう。ですので、目立たないお尻に接種したくなる気持ちは理解できます。
しかし、上腕以外の場所に接種するとケロイド・瘢痕となることが多いため、上腕に接種したほうが良い考えています。
BCGワクチン接種後
BCGワクチン接種後は日陰で10分かけて乾燥させます。
クリニック・保健センターで予防接種した後は、しばらく体調に変化ないか様子をみるため、日光を浴びることはまずないでしょう。
ワクチン接種後に入浴は可能です。
ですが、接種部位を擦りすぎたり、揉んだりするのはやめましょう。
ワクチン接種後の経過について
接種後の経過は、以下の通りです:
- 10日後:接種部位に赤いポツポツができる
- 3週後:接種部位が腫れて、周囲の赤みが強くなる
- 6週後:赤みが強くなり、膿が出ることもある
- 2月後:徐々に赤みは薄くなる
- 4月後:瘡蓋(かさぶた)が取れて、痕が残る
3〜4ヶ月しても、接種部位のかさぶたが取れず、ジュクジュクしている場合は医師に相談するとよいでしょう。
脇の下のリンパ節が腫れることもあります。
脇の下のしこりは、基本は様子をみていて大丈夫です。
ですが、しこりが大きくなったり、痛がるようなら医師に相談されてよいでしょう。
BCG接種後のコッホ現象って何ですか!?
「コッホ現象」とは、BCG接種後1〜5日以内に接種部位の針痕が急激に赤く腫れ上がることをいいます。
上の正常な経過例と、明らかに赤みの出方が違うのが分かります。
コッホ現象が出たらどうしたらよいですか?
コッホ現象が出たお子さんは、すでに結核菌に感染している可能性があります。
接種してすぐ(多くは3日以内)に腫れるようでしたら、医療機関への受診を考えてください。
腕の写真を撮っておくとよいと思います。
コッホ現象はすぐに治りますか?
この腫れはすぐに治まることが多いです。ですが、すぐに赤みが治ったとしても、医療機関に受診しなくてよいわけではありません。
コッホ現象がみられる場合は、赤ちゃんがワクチン接種前に、既に結核菌へ感染していた可能性があります。
まずは、BCG接種をうけた医療機関か指定された病院へ受診しましょう。
まとめ
BCGは結核予防のために接種しており、左腕の上腕での接種が推奨されています。
接種後3日以内に腫れるようでしたら、「コッホ現象」の可能性があるため、お早めに医療機関へ受診しましょう。
あわせて読みたい