風邪で抗生物質がいらない理由
以下が今回のポイントとなります:
- 風邪はウイルス感染がほとんどです
- ウイルス感染には抗生剤が効きません
- 熱は数日で、咳・鼻水は10日程度で自然に治ることが多いです
そもそも風邪ってなんですか!?
風邪は、医学的に「急性上気道炎(鼻かぜ)」「急性咽頭炎(のどのかぜ)」です。
こどもが風邪をひくのは、ほとんどがウイルス感染のせいです。
繰り返し風邪をひいてしまうのは、風邪の原因となるウイルスは無数(400-500以上)にあるのと、ウイルスも変異して姿が変わってしまうためです。
風邪の代表的なウイルスは;
- パラインフルエンザウイルス
- ライノウイルス
- コロナウイルス
- エコーウイルス
です。
風邪にかかりやすい時期
風邪にかかりやすい時期は、季節の変わり目です。
季節の変わり目は、体調を崩しやすいですし、流行するウイルスの種類が大きく変わるからです。
こども特有の現象ですが、集団生活を新たに始めた時は、繰り返し風邪をひく傾向にあります。
これは、保育園・幼稚園には、こどもの数だけ様々なウイルスが存在し、お互いに風邪のウイルスを移し合ってしまうためです。
ほとんどのケースは、風邪を繰り返しているだけなのです。
風邪に抗生剤が不要な理由
抗生剤は細菌には効果があるのですが、風邪の原因の大半を占めるウイルスには全く効きません。
このため、ほとんどのかぜで『抗生剤は不要』といえます。
と心配される方もいるでしょう。
確かにウイルスには抗生剤は効きませんが、過剰に心配する必要はありません。
ウイルスは自分の免疫力で十分に倒せるからです。
抗生剤を使用するデメリット
抗生物質が全く無害なものであれば、何も気にせずに処方できますし、患者さんも安心して飲むことができます。
しかし、全ての薬にはメリットとデメリットがあります。
抗生物質を使用する最大のデメリットは「耐性菌」です。
日本では抗生剤が乱用されている
日本は医師への抗生剤の適正使用の教育が不十分で、抗生剤の使用率が高く、乱用されています。
セフェム系、キノロン系、マクロライド系では実際、日本は世界でも有数の抗生物質を使用している国です。
一方で、オランダやスウェーデンなど、抗生剤処方の管理がしっかりされている国には、耐性菌がかなり少ないです。
上の最新の研究ですと、日本の小児では、66%程度の風邪の患者に抗生物質が処方されていたというデータがあります。
小児の風邪で本当に抗生物質が必要な症例は10%程度といわれているので、66%はかなり過剰に抗生物質が処方されているといえます。
ちなみにですが、抗菌薬の適正使用が進んでいるスイスでは、かぜに抗生剤を処方するケースは3%ほどというデータがあります。
日本は広域な抗生物質が使用されすぎている
出される抗生剤として多いのは、メイアクト・フロモックス・セフゾンをはじめとする第3世代のセフェム系抗菌薬、クラリス・ジスロマックを中心とするマクロライド系の抗菌薬です。
さらに、最近では、「オゼックス」「オラペネム」「ファロム」など、広域抗生剤が処方されすぎて、更なる耐性菌の増加が懸念されています。
耐性菌の何が問題か!?
問題点は、耐性菌が体で悪さをした場合、効く薬がなくなってしまうことです。
例えば、風邪をこじらせて肺炎になったが、抗生剤が効かない菌の場合、非常に重篤な状態になることがあります。
なぜなら、有効な抗生剤がないため、菌の進行を止めることができなくなるからです。
効かないはずの抗生剤が処方される理由
どう考えても理論的には風邪に抗生物質が効かないのですが、それでも使用され続けて来たのには理由があります。主には:
- 肺炎など重症化や中耳炎の予防
- 風邪症状の期間短縮
- 風邪症状の軽減
などでしょう。
ですが、風邪に抗生剤を使用しても、1〜3に対して有効性がないのは、過去の研究でわかっています。
では、風邪の治療はどうしたらよい?
インフルエンザではタミフルやイナビルなどの特効薬がありますが、風邪に特効薬はありません。
基本的に自分の免疫力でウイルスを退治して、自然に回復するのを待るのがよいでしょう。
このため、体の回復をサポートするのが治療の基本です。
例えば、適切な栄養、十分な水分摂取をする、休息をとる、がよいでしょう。
多くの風邪は、熱は長くても3日〜4日で下がりますし、咳や鼻水も長くても10日くらいで軽快するのがほとんどです。
科学的根拠のある風邪の治療はこちらにまとめています⇩
きっちり診断されて、抗生剤を処方されてますか?
適切な診断があって、適切な治療ができます。
つまり、抗生剤を処方されるには、それなりの根拠が必要といえます。例えば;
- 溶連菌感染症
-
気管支炎や肺炎
- 中耳炎
- 尿路感染症
- 念のため飲んでおきましょうか
- 何も言われず抗生剤を処方されていた
抗生剤には薬そのものの副作用と耐性菌のリスクが常にあります。
ですので、なぜ抗生剤が必要なのか説明をしてもらい、保護者の方も理解してから使用するとよいでしょう。