- 川崎病ってなんでしょうか?
- 川崎病は川崎市と関係あります?
- 川崎病は川崎医科大学と関係ありますか?
- 川崎病は公害ですか?
など、川崎病にまつわる質問が多々あります。
今回は、これらにお答えしながら、川崎病について解説していきましょう。
川崎病って何ですか!?
まずは川崎病の原因や名称の由来を説明していきましょう。
川崎病と原因について
川崎病は、乳幼児がかかる『全身性の血管炎症候群』です。
主に、中小動脈の血管炎、つまり比較的細い血管が炎症を起こす疾患です。
様々な研究がされていますが、川崎病の原因はいまだに不明です。
おそらくですが、感染症と遺伝子の双方が関連し合って、血管炎になるのではと仮説が立てられています。
つまり、血管炎を起こしやすい体質の子が、とある感染症を引き金に、全身の血管に炎症が起きて、川崎病となると考えられています。
川崎病が起こりやすい年齢
川崎病が起こりやすいのは7歳以下の小児です。
こちらの図はアメリカでのデータになりますが、7歳以下がほとんどで2歳がピークです。
1歳未満の乳児でも川崎病を起こすので注意が必要です。
というのも、乳児は冠動脈瘤という合併症を起こしやすいからです。
(参考文献はこちら↓↓)
罹患率は日本が世界最多でして、年間1万人以上も罹患しています。
川崎病の歴史
川崎病は、日本赤十字社の川崎富作博士が1961年に初めて発見し、1967年に報告した栄誉を讃えられて川崎病と名づけられた病気です。
世界的にも”KAWASAKI Disease” と呼ばれ、国際川崎病学会という世界の研究者が集まる学会も3年に1度開かれ、世界中の川崎病研究者が集って熱いディスカッションをかわしています。
ちなみに、川崎市や川崎公害、川崎医科大学とは無関係であることに注意しましょう。
川崎病の症状について
川崎病の症状は特徴的で、見た目で診断可能です。
川崎病の診断基準
川崎病の診断基準は以下の通りで:
- 発熱(*ガイドラインは変更され、日数は問わない)
- 両側眼球結膜の充血
- 口腔・口唇の変化(赤み)
- 頚部リンパ節の腫脹
- 発疹(BCG接種部位を含む)
- 四肢末端の変化(硬性浮腫・手掌足底の紅斑)
です。
この6つの症状のうち、5つ以上そろった場合に川崎病と診断します。
川崎病の6症状の特徴について
特に多い症状は、発熱の持続と眼球結膜や口唇の発赤です。
逆にいうと、熱が長引いていても、眼と口の変化が両方ない場合は川崎病の可能性は比較的低いと考えます。
乳児などは、はっきりと川崎病の症状を認めないことが多いです。
ですが、BCGを接種した痕が、赤く腫れ上がるのも特徴的です。
頚部リンパ節の腫れは、全体の75%程度と頻度が低いです。
しかし、年長児になると逆にリンパ節の腫れが目立つことが多いです。
化膿性頚部のリンパ節炎と勘違いされて抗生剤を投与開始してしまうことも度々あります。
川崎病の治療
川崎病の治療 の根幹は、
- 免疫グロブリン大量療法(IVIG)
- アスピリン
の2つが基本です。
免疫グロブリンは、血管の炎症を止める作用があります。
グロブリン製剤は、血液製剤で高価なのと(1gあたり約1万円)、未知のウイルスに感染する可能性があるので、診断と治療は慎重に行います。
高価な治療を行う理由
川崎病自体は、放置していても14日くらいに自然軽快します。
ですが、無治療の場合、最大で25%くらいのお子さんに冠動脈瘤ができます。
『冠動脈瘤』は、心臓に酸素と栄養を送る細い血管で、ここに瘤ができると将来に心筋梗塞や突然死の原因になるのです。
このため、高価な免疫グロブリン製剤を使用して、血管炎を治療するのです。
免疫グロブリン製剤の有効性
免疫グロブリン製剤の有効性は、日本では1983年に最初に投与された症例集積があり、その1年後にRCTが行われ、有効性が確認されています。
アメリカで初めて確認されたのは、1986年で、ハーバード大学提携病院であるBoston小児病院のJane Wane Newburger先生が免疫グロブリン大量療法を行い有効性が確認されています。
当時、川崎病の25%程度に冠動脈の合併症を認めていたのですが、この治療法を開始してから5%以下に減らすという劇的な治療成績の向上がありました。
最近はステロイドも追加しています
現在は『免疫グロブリンとアスピリン』にステロイドを併用することもあります。
但し、全例に使用するわけではなく、血液検査や治療の経過から、重症例を選別して行う手法をとります。
ステロイドの有効性は専門家でも、かなり意見が分かれていました。
ですが、ここ10年で発表された研究では、重症川崎病にはステロイドを併用したほうがよい、と支持する論文・研究が多数報告されており、議論に決着は付きそうです。
(一番有名な論文は以下のリンクです↓↓)
現に、免疫グロブリン大量療法を始めたハーバード大学関連病院であるボストン小児病院でも、重症型の川崎病には、ステロイドの併用をしているそうです。(*2014-15年頃の情報です…悪しからず)
冠動脈瘤になりやすい例
冠動脈瘤になりやすい患者には一定の傾向があり:
- 1歳未満
- 男児
- 治療開始が遅い(7〜10日以降)
があげられます。
ですので、5日以上続くような発熱では、1度小児科へ受診されることをオススメしています。
川崎病は治療のタイミングが非常に重要な病気で、早期発見・早期治療がとても重要な疾患ともいえます。
◎ 一般の方向けに川崎病の本が出版されています。医療者でなくとも理解しやすいように配慮されており、患者さんの間でも好評です。
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