小児科医が診る身体発達のポイント
1歳6ヶ月健診の時は、全身を診察するのが基本ですが、頭部・歯・腹部・脚を入念に診るのが一般的です。
頭部について
1歳半になると、大泉門が閉鎖しています。
頭のてっぺんより前側を触って閉鎖を確認しています。
歯について
おおよそですが、上に8本、下に8本の歯が生えています。
食後にガーゼで拭いたり、歯ブラシを使用するように指導しています。
腹部について
徐々にお腹のポッコリ具合も少しずつですが、目立たなくなってきます。
それでもちょっとポッコリしていると思います。
時々、お腹がポッコリしているのを気にされる保護者もいますが、触診で大きな異常がなければ、基本は心配いらないと思います。
脚について
X脚といい、内股がひどい場合は整形外科の受診が必要となることがあります。
O脚はしばらく様子をみることが多いです。
運動機能の発達について
1歳半ですと
- 一人で転ばないで歩く
- ぎこちないが走る
- 親と手をつないで階段を登る
ができるようになります。
1歳半で、ひとり歩きが出来ない場合は、地域の総合病院に受診されるとよいでしょう。
ボールを投げたり、蹴ったり、椅子に座ったり、低いテーブルによじ上ったりもできるようになってきます。
言葉がまだ出ないのです
1歳6ヶ月で言葉が出ていない時、以下の点を確認しています;
- 周囲とのコミュニケーション:視線、声への反応、共感
- 聴力に異常がないか?
- 身長・体重など成長に遅れがないか
などです。
これらのポイントに異常がない場合は、3歳まで様子をみることもあります。
これらの点で異常を認める場合やはっきりしないときは、専門施設(療育施設など)への受診を促しています。
専門施設について
専門施設には、小児神経や発達の専門家がいます。
エキスパートにより、発達障害、聴力障害、身体的な異常がないかを確認します。
必要であれば、検査、治療、発達を促すリハビリテーションを行います。
言葉が出ないため、子供も保護者もストレスが溜まりやすくなります。
日常生活でのストレスを減らすように、サポートを一緒に考えます。
言葉はコップの水があふれるように
言葉がでてくる仕組みは、コップに水が溜まり、溢れ出てくる様子に例えられます。
たくさん言葉のシャワーをあびると、徐々に言葉を入れるコップが満たされ、最後に水が溢れるように、話し言葉が溢れ出てくるのです。
言葉が脳に蓄積するスピードは、個人差が非常に大きいです。
大事なことは、絵本を読み聞かせたり、一緒に唄をうたったり、沢山ことばをかけてあげて、言葉が出てくるようにサポートしてあげましょう。
1歳半健診で教える育児ポイント
1歳半健診では、いくつか育児のポイントを保護者にお話します。
自治体やクリニックによっては、めまぐるしく診察が終わってしまうことが多いので、以下を参考にしてください。
育児のポイント ① 生活リズムをつけましょう
なるべき決まった時間に起床し、決まった時間に就寝させるようにしましょう。
食事やおやつも、できるだけ決まった時間にとらせて、生活に一定のリズムをつけることが重要です。
育児のポイント ② ひとり遊びもさせてみましょう
この時期ですと、おままごとを始めます。
言葉をかけながら、一緒に遊ぶとよいでしょう。
一人でブロックや積み木などで遊んでいるときは、ひとり遊びを見守ってあげるとよいでしょう。
育児のポイント ③ ほめること、禁止をすること
ブロックを上手くつめたり、お片づけをしてくれたら、必ず褒めてあげましょう。
また、危険な行為や行動をした場合は、注意をしましょう。
注意をする時、言葉の理解は不十分ですので、危険な行為をした場所から遠ざける、危ない物をとりあげるなどで、行動で示しましょう。
保護者が怒鳴っても、怒っても、この時期のこどもは理解はできません。
また、子供に暴力をしても、なぜ怒られたのか理解できませんので、やめましょう。
育児のポイント ④ トイレ・トレーニング
昼寝のときにおむつが濡れていなかったり、尿意や便意を教えてくれた時は、必ず褒めてあげましょう。
トイレトレーニングの初期は失敗が続きます。
失敗は当たり前ですので、うまくいったら褒めてあげましょう。
育児のポイント ⑤ 事故に気をつけましょう
一人で活発に走ったり、高いところに登ったりします。
転落したり、ぶつかったり、怪我をする可能性のある場所には、あらかじめ防止柵などをつけましょう。
また、道路などを飛び出すと危険ですので、大人が常に傍にいるようにしましょう。
育児のポイント ⑥ 食べこぼし、手づかみについて
この時期は、口に詰め込みすぎたり、食べこぼしをします。 トライ&エラーを繰り返しながら、徐々に1口量を覚えるので、見守ってあげましょう。
手づかみも、手と脳の大事なトレーニングです。
食べ物を目で確かめ、手でつかみ、口に入れる、という協調運動を覚えている段階なのです。
非常に大切な運動ですので、できるだけ自主性を促してあげましょう。
スプーンやフォークも、徐々に上手に使えるようになっていきます。
ついつい親が口に運んでしまいますが、自分で使用させて、見守りましょう。
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スプーン&フォークの形が工夫されていて、乳幼児でも手で持ちやすいように設計されている優れものです。
ご飯粒などをすくいやすいように工夫されています。
さらに、フォークも先端が丸く、安全性に配慮されています。
食器具で悩んでいる方がいれば、一度試してみてもよいでしょう。
育児のポイント ⑦ 母乳と哺乳瓶について
1歳半では、母乳は栄養源として必要ではありません。
むしろ、母との情緒的なむすびつきを求める気持ち、甘えたい気持ちからくる行動と考えられています。
いったん母乳をやめると決めたら、しばらくは欲しがってもあげない方針を貫くと、子どもは理解してくれます。(卒乳についてはこちら↓)
哺乳瓶の使用も、1歳半くらいからは徐々にやめて、ストローで飲む練習をしていくとよいでしょう。