日本では「ハンコ注射」でおなじみのBCGワクチンです。
BCGワクチンは肺結核、粟粒結核、結核性髄膜炎に有効といわれていますが、今回はその有効性を示した論文をピックアップしました。
研究の背景
研究の解析が始められた2009年までにBCGワクチンの有効性を示した論文は21ほどあり;
- 18本は肺結核に対する予防効果
- 6本は粟粒結核や結核性髄膜炎に対する予防効果
が検討されています。
これら過去の研究の問題点として、肺結核への予防効果は報告によりばらつきが大きい点です。
一方で、粟粒結核・結核性髄膜炎に対する予防効果は同等のものが多いです。
赤道から遠い(緯度が高い)と結核菌への曝露が少ない
過去の研究は赤道直下の国〜カナダと行われた場所にばらつきがありました。
研究結果のばらつきの原因として、赤道から遠い(緯度が高い)と抗酸菌への曝露が少なく、ツベルクリン反応陰性者が多い為、ワクチンの有効性が高かったのではないか、と考察されています。
一方で、赤道直下の国々で行われた研究のクオリティーに対する疑問も残っています。
研究方法
過去に行われたRCTを対象とし、メタ解析が行われています。
メタ解析は、多数の研究を網羅的に集めて、1つの仮説を検証する研究です。
今回は、BCGの研究を網羅的に集めて、有効性を確かめています。
対象地域は世界各国
研究が行われた国は様々で;
- アメリカ(1930-50):10
- インド(1950-88):4
- カナダ、イギリス、ハイチ、南アフリカ(1933-65):それぞれ1
となっています。
肺結核と粟粒結核・結核性髄膜炎の2つをアウトカムにしています。
研究結果
肺結核への予防効果
接種年齢別に予防効果をみると:
- 学童:RR 0.26 (0.18〜0.37)
- 新生児:RR 0.41 (0.29〜0.58)
となっています。
例えば、新生児でBCGの予防接種をすれば肺結核になる危険性が60%程度減らせる(1 – 0.41 = 0.59 = 59%)といえます。
緯度別にみると:
- 40度以上:RR 0.32 (0.22〜0.46)
- 20-40度:RR 0.68(0.48〜0.95)
- 20度以下:RR 0.72 (0.58〜1.05)
でした。
確かに緯度の低い地域では予防効果が薄れています。
*日本の緯度は20〜45度くらいにあります。
粟粒結核・髄膜炎への予防効果
全体ではRR 0.15(0.08〜0.31)という結果です。
年齢別にみると:
- 新生児:0.10(0.01〜0.79)
- 学童:0.08(0.03〜0.25)
となっています。
つまり、BCGワクチンは粟粒結核や髄膜炎のリスクを90%減らしてくれます。
研究の考察
以上の結果から、BCGは新生児・乳児や学童には有効性があるといえます。
特に、結核菌や他の抗酸菌に曝露する前に予防接種をすると有効性が高いです。
研究の問題点としては、研究結果が古いため、疫学手法にやや難があります。
例えば、盲検化がしっかりできていなかったり、被験者の追跡が不十分だったり、など疑問が残る点もあります。
あと、昔からBCG接種は日本でされているにもかかわらず、メタ解析の研究に日本の研究結果がないことに、個人的にはがっかりしてしまいました。
まとめ
BCGワクチンの有効性は、新生児(乳児)・学童の期間に接種すれば予防効果があります。
特に環境中にもいる抗酸菌への曝露前に接種されると良いでしょう。
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