- 『頭をぶつけてしまいました』
- 『心配なので、画像検査をしてください』
それほど多い相談ではありませんが、時々、このように心配されて受診されることがあります。
私たち小児科医は、受傷の程度、本人の症状や意識、神経学的な診察をもとに画像検査の適応を判断しています。
こどもはよく頭をぶつけます
こどもは、怖いもの知らずで好きなように動くため、頭をぶつけることは良くあります。
はいはい、伝い歩き、一人歩きなど運動機能が発達するにつれ、頭をぶつけてしまうリスクは上がります。
また、公園に遊びに行った際、ついつい楽しくなって転倒するケースも多いです。
小児科は外傷を得意としない
小児科は本来は内科疾患を中心に診る科ですので、頭部打撲など外傷は得意ではありません。
医療施設やクリニックによっては、頭部外傷は診ないこともあります。
とはいえ、社会的なニーズもあるため、小児科でもある程度の外傷をみる施設も増えています。
私個人としても、頭部外傷だけでなく、簡単な外傷、縫合処置や、軽い熱傷、肘内障などは診ることができます。
レントゲンやCT検査について
ときどき 「骨折が心配なので、レントゲンやCTを撮ってください」 と言われることがあります。
軽い頭部外傷であれば、骨折をしたり、頭の中に損傷をうけることは少ないです。
また、レントゲンもCTも被曝するデメリットがあります。
レントゲンは不正確
レントゲンは被爆量が少量ですが、骨折の診断は非常に難しくなります。
これは、あかちゃんの骨が軟らかく、骨折の線として捉えられないことが多いからです。
また、レントゲンは頭の中の出血まで捉えることはできません。
ですので、本気で骨折を疑った場合には、原則としてCTを撮影します。
CTを撮影するデメリット
CTは骨折も頭の中の出血も鋭敏に捉えることができます。
しかし、CTもいくつかデメリットがあります。
例えば、CTは放射線の被曝量がレントゲンと比較してはるかに多いです。
CTを撮影するには、赤ちゃんが動くと画像がブレてしまうため、眠くなる薬(鎮静薬)を使ってやります。
軽症の頭部外傷なら画像検査は不要
画像検査にもデメリットが多いため、軽症の頭部外傷であれば、画像検査をせずに様子をみることがほとんどです。
軽症かどうかは、どう見分けていますか?
頭部外傷が軽症かどうかは、
- たんこぶの大きさ
- 意識がしっかりしているか
- 嘔吐が複数回ないか
- けいれんがないか
- 親からみて、普段とかわりがないか
- どのくらいの高さから落ちたのか
を参考にします。
たんこぶがないか、あっても小さく、普段と様子が変わらなければ、心配ありません。
頭を打った後に1〜2回程度の嘔吐をすることはありますが、すぐに治まれば、ほぼ心配はいりません。
頭からの出血量が多い、明らかに様子がおかしいときは、救急車を読んでもよいでしょう。
どのくらい様子をみたらよいですか?
頭を打ってから、6〜24時間以内に症状が出てくることがほとんどです。
1日程度、ご自宅で安静にして問題なければ、基本的には安心してよいでしょう。
遅れて症状が出てくることはありますか?
例えば、高齢者の場合は脳が萎縮しているため、ゆっくりと出血して遅れて症状が出てくることがあります。
しかし、子供の場合、脳は頭の中にぎっしりと詰まっているため、比較的早く症状が出ます。
ですので、遅れて症状が出てくることは比較的に稀でしょう。
再発防止も重要です
ご家庭で頭をぶつけてしまった場合、家庭環境などを見直しましょう。
赤ちゃんが落ちる危険のあるソファーや椅子の上に寝かせたりしないようにしましょう。
ベビーカーはしっかりと安全ベルトをしましょう。
室内でも、机や棚の角は頭をぶつけると危険ですので、カバーするグッズなどを備えるとよいでしょう。
あわせて読みたい