ハチミツにはボツリヌス菌がいるため注意が必要です。
『ハチミツを与えるのは1歳すぎてから』と言われている理由について、詳しく解説します。
乳児ボツリヌス症を起こりやすい月齢
乳児ボツリヌス症になる年齢分布は非常に特徴的です。
乳児ボツリヌス症は生後3週〜6ヶ月の乳児が95%を占めるといわれています。
特に生後2〜4ヶ月のお子さんに多いと言われています。
ボツリヌス症が乳児に起こりやすい理由
生まれたての赤ちゃんは、腸内の常在菌が確立していません。
このため、ボツリヌス菌が侵入すると、腸内で定着し増殖するため、乳児にボツリヌス症が起きやすいのです。
乳児ボツリヌス症の歴史
日本では、1986年に輸入したハチミツを摂取したことによる乳児ボツリヌス症が初めて報告されています。
その後、同様の症例が続いたため、1987年に厚生省から 「乳児にハチミツを与えないように」 という勧告がでています。
1990年以降は、ハチミツ摂取歴をもつ乳児ボツリヌス症の報告例はありません。(*2017年に新たに報告されました)
しかし、ハチミツ以外が原因で起こった乳児ボツリヌス症は報告され続けています。
乳児ボツリヌス症の症状
すぐに症状が出るわけではない
ハチミツなどに含まれるボツリヌス菌を摂取しても、すぐには症状はでないことがあります。
潜伏期間は3〜30日と言われています。
典型的な症状
これまで元気であった乳児が、 脱力(90%) 哺乳不良(88%) 便秘(75%) を起こします。
その後、脳神経や末梢神経へと症状がでてきます(主に麻痺が起こる)。
アメリカではボツリヌス症になった場合、0.8%の死亡率といわれています。
ボツリヌス症の診断
診察から乳児ボツリヌス症を疑う場合は、便からボツリヌス菌と菌が出す毒素を確認することで確定診断となります。
乳児ボツリヌス症は、便秘になりやすいため、浣腸などで排便させ、細菌検査へ提出して原因菌を確定します。
ボツリヌス菌はどこから?
また、どこからボツリヌス菌をもらったのか特定することも重要です:
- 食物
- 井戸水
- 土壌
などから菌が検出されないか、確認することもあります。
また、この病気は四類感染症になっており、医療者は届け出が必要となります。
ボツリヌス症の治療
乳児ボツリヌス症で最も恐ろしい症状は呼吸筋の麻痺です。
呼吸筋が麻痺すると自力で呼吸できなくなるため、人工呼吸器が必要となります。
乳児ボツリヌス症のうち、およそ60%以上の症例で人工呼吸器が必要といわれています。
抗菌薬の投与は慎重に
抗菌薬の投与は非常に慎重に行う必要があります。
特に一部の抗菌薬(アミノグリコシドやクリンダマイシン)は毒素の作用を助長させることがあるため、使用することはできません。
海外ではボツリヌス毒素に対する抗体を使用することもあるようです。
乳児ボツリヌス症を回避する方法
まずはハチミツが危険であるのが明らかであるため、1歳未満の乳児に飲ませるのは絶対にやめましょう。
井戸水などから感染することもあるため、基本的に安全な水道水を使用するようにしましょう。
また、保護者は乳児を触るときは、しっかりと手を洗い、感染のリスクを減らすとよいでしょう。
東京都でボツリヌス菌で死亡、国内初
生後6ヶ月の赤ちゃんが乳児ボツリヌス症で死亡しました。
離乳食としてハチミツ入りのジュースを与えていたようです。
しかも、市販のハチミツを与えていたようです。
(12ヶ月未満の乳児には基本的にハチミツもジュースも不要です)
まとめ
1歳未満の赤ちゃんには、ハチミツは食べさせないようにしましょう。
ボツリヌス菌は、ハチミツ以外からも感染することがありますので、注意しましょう。