『日本脳炎ワクチンはうけた方が良いですか?』と外来で質問されることが、時々あります。
水痘(みずぼうそう)やムンプス(おたふくかぜ)のように身近な疾患でないせいか、『日本脳炎のワクチンって本当に必要?』と思われる方も多いです。
今回はこちらの質問にお答えしてみます。
日本脳炎について
日本脳炎は日本脳炎ウイルスに感染することで起こります。
このウイルスはブタに生息しており、感染したブタの血を蚊が吸って、ヒトの血を吸うため起こります。
つまり、蚊が媒介する病気といえます。
日本にいるブタも日本脳炎ウイルスに感染しています
日本は衛生面がしっかりしているので大丈夫と思いたいですが、実は日本のブタも日本脳炎ウイルスに感染しています。
特に西日本を中心に広範囲に渡り、ブタが日本脳炎ウイルスに感染していると報告されています。
日本脳炎ウイルスに感染しても無症状のことが多いが…
日本脳炎ウイルスに感染しても無症状のことが多いです。
日本脳炎ウイルスに感染しても、1000人に1人程度しか日本脳炎を発症しません。
しかし、一旦、脳炎を起こすと合併症・後遺症は高い確率で起こります。
例えば、致死率は20〜40%といわれています。
さらに、有効な治療方法がないため、ワクチンで予防するしか効果的な手段はありません。
国内で日本脳炎にかかる小児はいますか?
発症例は少ないですが、日本脳炎にかかる小児は確実にいます。例えば:
- 2006年:熊本
- 2009年:熊本・高知
- 2010年:山口
- 2011年:沖縄・福岡
- 2015年:千葉
で報告されています。
身近で日本脳炎に罹った子供をみることは稀でなので想像しにくいかもしれませんが、国内でも日本脳炎の発症例は続いています。
また、海外(東南アジアなど)では日本脳炎は流行しています。
いつ、どのような経路で輸入感染症となるかは予測困難です。
ワクチンは予定通り接種されたほうがよいでしょう。
日本脳炎ワクチンのスケジュールについて
標準的なスケジュールは3歳で2回、4歳で1回ワクチンを接種します。
しかし、ワクチンは3歳まで待たなくても、6ヶ月以降であれば接種できます。(自治体によっては6ヶ月〜7.5歳までを定期接種としています)
生後6ヶ月からワクチン接種するケース
例えば、
- 日本脳炎流行地域に渡航・滞在する
- 日本脳炎患者が発生した地域に居住する
- ブタの抗体保有率が高い地域に居住する
場合などは、生後6ヶ月からのワクチン接種を推奨されています。
(日本脳炎罹患リスクの高い者に対する生後6か月からの日本脳炎ワクチンの推奨について|公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY)
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