▪️ 小児科は第六感が大事
統計学や疫学を生業にしている私がこんなことを言うと、他の小児科医たちに怒られそうですが、小児科医は「第六感」が大事です。
パッと診察室で子供をみて、病歴や診察では特に大きな異常がないけれども、「何か変」と感じることがあります。
小児科医ならば「何か変」と思って検査をしたら、重症な感染症があったという経験は誰もがあると思います(多分ですが…)。
▪️ なぜ第六感が大事なのか
小児科外来は国内外を問わず、混み合っています。
批判を恐れずにいえば、大半が軽症患者です。
しかし、小児科外来が真に恐ろしいのは、この大半の軽症患者の中に、ひっそりと重症患者が潜んでいることです。(時々、冷や汗をかきます)
この重症患者をきちんとピックアップするには、患者さんの話をよく聞き、しっかりと診察をすることは重要ですが、小児科医として「何か変」と感じることも同じくらい大切です。
▪️ 小児科外来は見逃しが多い
これも保護者の方々には怒られてしまいそうですが、基本的に小児科外来は非常に見逃しが多いです。
例えば、イギリスで行われた研究では、小児の重症疾患である髄膜炎の患者さんの半分は、小児科医や家庭医が最初の診察で見逃していたという報告もあります。
▪️ 『第六感』が何かわかれば有益かもしれない
もし『第六感』という言葉を、医学的な用語で説明できたとしたら、こどもが重症になる前の予測に役立ちます。
今回は、小児科医が感じる『何かおかしい』という感覚を検証した研究です。
研究の方法
今回の研究はベルギーの小児科・家庭医を中心に行われたものです。
- 研究機関に受診された3890人の小児
- 年齢は0〜16歳
を対象に行われています。
医師が患者をみて「何か変?」と主観的に感じたかをみています。
さらに「何か変」と感じた理由を、患者の症状・見た目・親の心配などの項目から推測しています。
受診した小児は、受診後24時間以内に病院に入院していた場合に、重症な疾患があったと判断されています。
研究結果と考察
▪️ 小児科医の「何か変」という第六感は特異度が高い
3890人が受診しましたが、そのうち入院が必要な重症疾患のあった患者は21人(0.54%)でした。このうち
- 「何か変」と判断されなかった場合:
3762人のうち8人が入院(0.21%) - 「何か変」と判断された場合:
107人のうち13人が入院(12.1%)
となっています。
「何か変」という感覚は、感度が62%、特異度が97%でした。
▪️ 小児科医が「何か変」と感じた理由
小児科医が「何か変」と感じた理由に大きく影響していたのは
- こどもの見た目:意識レベルの低下、けいれん
- こどもの症状:体重減少、尿の異常、呼吸が早い
- 親の不安・心配
でした。
「親の不安・心配」という項目が非常に印象的でした。
普段からこどもを見ている保護者の心配を組み上げるのも大切といえます。
まとめ
小児科医の「何か変」という第六感は、その後の重症化を(ある程度)予測するものでした。
丁寧な診察をして、病歴を聴取するのは当たり前ですが、保護者の方々の不安・心配に向き合うことも大切と言えそうです。
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