前回「果汁は1歳になるまで与えないほうが良いでしょう」という記事が、非常に反響がありました。
「果汁は1歳までは与えないでよいでしょう」と前回は説明してきましたが「1歳以降はどうなの?」と思われる方もいるでしょう。
今回は2歳と5歳の小児で、フルーツジュースの摂取量と体重・身長の相関をみた研究です。
研究の背景
▪️ かつては乳幼児への果汁投与が積極的にされていた
アメリカのデータになりますが、ひと昔前は乳幼児への果汁投与が積極的にされていた時期があります。
例えば、1970年〜2000年にかけて、乳幼児へのフルーツジュースの投与が増加し続けていました。
特に学会などが主導で増加していたわけではなく、「フルーツジュースは健康的」という人々の思い込みと、巧みなマーケット戦略によると考えられています。
例えば、90%以上の乳児はフルーツジュースを飲んでいたという結果もあるほどです。
▪️ 1990年前後からAAPはフルーツジュースに対し懸念を示す
アメリカ小児科学会(AAP)は乳幼児への果汁投与が増えていることに対し、慎重な姿勢でいました。
例えば、フルーツジュースをあまりに早期に摂取することで、離乳食が遅れたり、別の食品を摂取しなくなり、糖質摂取が過剰になるため、肥満・低身長の危険性が高まることを恐れていました。
また、リンゴや梨のジュースに含まれるソルビトールは腸では吸収されないため、慢性的な下痢になったり、原因不明の腹痛となる点も報告されていました。
今回のこちらの研究では(少し古いものですが)、2歳と5歳時のフルーツジュース摂取量と身長・体重の関連性をみた研究をピックアップしました。
研究の方法について
NYに住む白人の平均なみの所得〜低所得の家庭を中心に食事と身長・体重の調査がなされました。
対象となったのは2歳と5歳のこどもです。
- 2歳:160人
- 5歳:107人
のデータを検討しています。
研究結果と考察
▪️ 2歳と5歳児のジュース摂取量
こちらが2歳と5歳児のフルーツジュースの平均摂取量です:
- 2歳:175 ml
- 5歳:148 ml
こちらが実際の分布ですが、かなり偏った分布をしています。
*1 ounces = 29.5 ml程度です。
今回の研究では『過剰摂取 = 約350 ml以上』と定義されています。
▪️ フルーツジュースを過剰摂取は、糖分摂取量が増加と関係していた
フルーツジュースを過剰摂取した場合、一日の栄養素をみると
- 炭水化物が40〜70 g 過剰摂取
- フルクトースが 20〜25 g過剰摂取
- ブドウ糖が 15〜35g 過剰摂取
になるという結果でした。
▪️ フルーツジュースを過剰摂取は、低身長・肥満と関係していた
さらに、フルーツジュースを過剰摂取していたこども達は、過剰摂取していないこども達と比較して
- 低身長の割合が高い(42% vs. 14%)
- 過体重・肥満の割合が高い(32% vs. 9%)
という結果でした。
まとめ
2歳〜5歳のこどもに、フルーツジュースを飲ませすぎると、肥満や低身長の原因になりえます。
今回の研究では「1日 ●● ml 以上はNG」とは断言できませんが、少なくとも350 ml以上は肥満や低身長の危険性があがります。
*アメリカ小児科学会は、1歳以降の小児において体重 1kgあたり10 mlの果汁を上限としています。
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