少し古い論文ですが、熱性けいれんのガイドラインが変更されたあと、医師の診療がどのように変化したのかをみた論文をピックアップしてみました。
近年は、日本でもガイドラインは次々と作られ、医師の診療の決断に影響をしていると思います。例えば、川崎病の場合、ガイドラインが変更された後に、急にステロイドの使用率が上昇しています。
アメリカでも同じような現象がないか調べたところ、ちょうど手頃な論文があったので、こちらを紹介させていただきます。
研究の背景
熱性けいれんについては、こちらに詳しく書いてあります。
アメリカでは1996年にガイドラインが改定され、その6年後の診療パターンの変化をこの研究はみています。
特に大きく変わった点が、腰椎穿刺(背骨に針を刺して、髄液を検査する)をルーチンで行うことが推奨されなくなりました。
研究の方法
全米の42病院から、患者記録をサンプルしています。
サンプル方法はランダムではなかったようですが、詳細な記載はありませんでした。
合計で1029人分の診療データを抽出して解析しています。
研究の結果と考察
腰椎穿刺について
- 18ヶ月以上:3.3%
- 18ヶ月未満:8.4%
で腰椎穿刺がされていました。
月齢以外にも、熱性けいれんの既往がない(つまり初発の熱性けいれん)場合に腰椎穿刺をされる可能性が高かったです。
ガイドライン改定前は30%もの患者に腰椎穿刺がされていたため、かなり減少したといえます。
おそらく肺炎球菌やHibワクチンが浸透したため、最も恐れていた髄膜炎のリスクが低くなった点も影響しているでしょう。
CTについて
CTは11%の患者で行われていました。
ガイドライン変更前は5%程度であり、増加しています。
ガイドラインではCTの推奨はしておらず、おそらくCTが普及したため、検査する頻度が増えてしまったのではないか?と著者らは推測していました。
血液培養・尿培養について
- 血液培養:68%
- 尿培養:34%
で採取されていました。
ガイドライン変更前とほぼ同じ値でした。
髄液検査と比較しても侵襲度は高くないので、あまり変化がなかったのかもしれません。
まとめ
診療ガイドライン変更により、医師の診療パターンは大きく変わることがあります。
日本の小児医療でも、どのように診療パターンが変わるのか、それによって医療費や患者アウトカムがどう変化しているのか、個人的に気になりました。