『インフルエンザワクチンって生ワクチンがあるのですか?』といきなり質問されてしまいそうですが、海外では2歳以上を対象に、経鼻からインフルエンザ生ワクチンを接種している国があります。
フルミスト(FluMist)と呼ばれる製品が一番有名かもしれません。
不活化ワクチンと比較しても安全性や有効性はすでに保証されているワクチンです。
卵アレルギーとインフルエンザワクチンについて
『どうして卵アレルギーとインフルエンザワクチンの話をするのですか?』
と疑問に思われる方もいるかもしれません。
インフルエンザワクチンは製造の過程で卵を利用するため、卵に含まれているタンパク質(オボアルブミンなど)が微量にワクチンに混入されてしまうことがあります。
過去の報告では、ワクチンに含まれるオボアルブミンの量が0.08 μg 以下で、アナフィラキシーにしっかり対応できる医療機関であれば、卵アレルギーのある小児でもインフルエンザのワクチン接種は可能とされていました。
現在の問題点
1つ目は、卵アレルギーのある小児にフォーカスした研究が多くはない点です。
2つ目は、特に喘息のある子供が経鼻のインフルエンザワクチンをした後に喘鳴が誘発される可能性がありますが、こちらも十分なデータがない点です。
今回ピックアップした研究は、こちらの2点に答えてくれています。
研究の方法について
今回の研究は2014年9月〜2015年2月にイギリスの30施設で行われました。
対象となった患者は;
- 2〜18歳の小児
- 卵アレルギーの既往がある315人(270人はアナフィラキシー)
- 喘息の既往がある445人
を対象に研究が行われました。
(アナフィラキシーで集中治療管理が必要だった小児は除外されています)
研究のスケジュールについて
研究の手順ですが;
- 経鼻生ワクチンを接種
- 30分はアレルギー症状を経過観察
- 72時間後に遅延型のアレルギー反応がないか電話で確認
- 4週間後に喘鳴の症状がなかったか確認
をされています。
研究結果と考察
全身性のアレルギー反応は稀かもしれない
卵アレルギーのあるこどもに、インフルエンザワクチンを使用しても全身性のアレルギー反応を起こした人は誰もいませんでした(0 / 779人)。
過去の研究と合わせて995人の卵アレルギーの患者がインフルエンザ生ワクチンを接種していますが、全身性のアレルギー反応は出ていないようです。
軽いアレルギー症状は起こることがあります
一方で、
- 局所的なアレルギー反応は1.2%
- 鼻のアレルギー症状は18.1%
- 喘鳴は3.7%
- 下気道症状は8.0%
で認めております。
ただし、これらの症状で入院が必要となったケースはいませんでした。
まとめ
卵アレルギーがあっても、経鼻インフルエンザ生ワクチンによる全身性のアレルギーのリスクは低いと考えられています。
ただし、軽いアレルギー症状が出ることがあります。
日本では不活化ワクチンの皮下接種であり、投与経路やワクチンの種類が異なるため、これらの報告例の一般化は慎重にならざるを得ません(しかし、ある程度は安全といってもよいでしょう)。
*小規模な研究で国内の論文ですが、日本でも似たような試みをしているようです。今後、さらに大規模な研究結果が出たら、皆様にお伝えしようと思います。