前回は風邪の原因、症状と合併症について解説してきました。
今回は風邪の治療について説明しようと思います。
対症療法について
『対症療法で様子をみましょう』
と外来で小児科医に説明されたことがあるかもしれません。
対症療法とは、症状に応じたお薬を出しておきますね、という意味です。
ですが、実は風邪に有効な薬は驚くほど少ないです。
対症療法でよく使用される薬について
こどもの風邪で使用される薬で
- 抗ヒスタミン薬(ペリアクチン・ポララミンなど)
- 去痰薬(ムコダインなど)
- 咳止め(アスベリン・メジコン・コデインなど)
などがあります。
これらの薬は市販薬にも入っていることがありますし、医師から処方されることもあります。
しかし、2点だけ留意したほうがいいと考えています
- 米国小児科学会やFDAは、特に6歳未満の小児へ風邪薬を使用することを推奨していない
- いずれの薬も科学的に有効性を検証された薬ではない
という点です。
例えば、抗ヒスタミン薬は風邪の治療で不要なばかりか、副作用が強く有害であるという報告は多数あります。
解熱薬について
『熱が出たから解熱薬』
『熱性けいれんを予防したいから、解熱薬を使用する』
『熱性けいれんを惹起するから、解熱薬は使用しない』
この見解はいずれも間違っています。(真ん中は決着がついていないです)
解熱薬はあくまで発熱時の『苦痛』に対して使う薬です。
熱があってお子さんが辛そうなら使えばいいですし、普段通りの元気があるなら無理して使用することはないと考えられています。
また、解熱薬は熱性けいれんを誘発もしないです。
加湿は鼻の症状を軽快するかもしれない
加湿をすると、鼻の粘液が柔らかくなるため、鼻水が出やすくなり、結果として鼻の通りが改善します。
このため『加湿しましょう』とアドバイスをされるのです。
加湿以外は、生理食塩水を鼻に点鼻したり、鼻洗いも鼻の症状の改善には有効と考えています。
同じ理由で、適切な水分摂取も重要と考えています。
ハチミツは咳に有効かもしれない
ハチミツが小児の咳に有効かもしれないという報告はいくつかあります。
しかしハチミツは1歳未満にはボツリヌス症のリスクがあるため使用しないでください。
抗菌薬(抗生物質)は効きませんよ
抗菌薬は細菌に有効な薬であり、風邪のウイルスには無効です。
このため、抗菌薬の使用は基本的に不要です。
抗菌薬を使用すべき時は、風邪をこじらせて
- 中耳炎
- 副鼻腔炎
- 肺炎
になってしまった場合に限られます。
風邪の予防は可能か?
風邪を完全に予防することは難しいですが、ある程度は予防することはできます。
例えば、
- ハンドソープを使用して手洗いをする(30秒が目標)
- 風邪をひいている子どもとの接触を避ける
- 机、ドアノブなどをアルコールで消毒する
などは有効かもしれません。
いつ受診したら良いですか?
咳や鼻水が出たからといって、急いで受診する必要はありません。
緊急で受診したほうがよい目安としては;
- 半日以上、水分が全く摂れない
- 不機嫌がずっと続く、呼びかけても反応が鈍い
- 呼吸が苦しそう
などがあれば、お早めに受診しましょう。
また、
- 38度後半の発熱が3日以上続く
- 鼻の症状が2週間以上続く(副鼻腔炎の可能性)
- 目や口が赤くなっている(川崎病の可能性)
- 耳を痛がる(中耳炎の可能性)
などの症状も準緊急で受診する目安となります。
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参考文献