『抗菌薬を安易に使っていると、耐性菌ができてしまう』
と聞いたことがあるかもしれません。
耐性菌で有名な菌の1つにMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)があります。
今回は、こちらの耐性菌について解説してみようと思います。
黄色ブドウ球菌って何ですか?
MRSAのSAは「Staphylococcus Aureus」の略語ですが、これは黄色ブドウ球菌のことです。
黄色ブドウ球菌は、健康な人でも30%が保菌しているといわれています。「保菌」とは、菌がただそこに定着しただけで、なにも悪さをしない状態です。
しかし、皮膚や粘膜が傷ついたり、免疫力が低下すると急に症状が出てくることがあります。
どのように耐性菌になるのですか?
もともと黄色ブドウ球菌は(メチシリンなどを始めとした)抗生物質に耐性はありませんでした。
しかし、1950年頃から抗生剤の使用率が上がり、メチシリンや類似の抗生物質が効かなくなったMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)が出現するようになりました。
▪️ 最初は入院患者での感染が多かったです
抗生剤を使用するのは入院患者で圧倒的に多いので、耐性菌であるMRSAの感染も病院内でのケースがほとんどでした。
しかし、1990年代から高齢者の介護施設などを始め感染が広がり、病院の外の一般の健康な方々にも感染するようになりました。
2000年代には、健康な人の皮膚の感染症の半分がMRSAであったとする報告もあります。
▪️ MRSAにはどこで感染しますか?
結論からいうと、どこでも感染しますが、
- 入院している時
- 外来に受診している時(特に透析や化学療法)
- その他(健康な人から)
となります。
MRSAはどのように感染しますか?
黄色ブドウ球菌は皮膚や鼻に定着していることが多いです。このため
- 皮膚と皮膚の接触による感染
- 汚染したもの(ドア、ハンドル、携帯)を介した感染
の2通りがあります。
主に接触感染が多いため、手指消毒が大切といえます。
MRSAに感染しやすい人はいますか?
MRSAに感染は、入院期間中や、外来受診時、さらに院外・クリニック外でも感染することがあります。
▪️ 病院内や外来での感染について
病院内や外来でMRSAへの感染が多いのは;
- 手術後の傷口・点滴の刺入部
- 長期間、入院している
- 抗生剤を使用している
- 免疫力が弱まっている(抗がん剤を使用、透析をしている)
- MRSAに感染している人が近くにいる
などの場合、院内で感染する危険性が高いといえます。
院内では医療者の手を介して感染したり、医療器具から感染してしまうこともあります。
特に透析患者はMRSAへの感染のリスクが非常に高いといわれています。
▪️ 院外での感染について
最近は病院やクリニック外でも感染するケースがあります。一般的に感染しやすいと言われているのは、
- 皮膚に傷がある
- アスリート(特に体と体の接触のある競技)
- タトウーを入れている、ピアスをしている
- 体毛を剃っている
- タオルなどを共有する機会がある
などが感染の機会になります。
まとめ
MRSAは一昔前は病院内での感染がほとんどでしたが、近年は病院でなくても、どこでも感染する危険性があります。
次回は、MRSAに感染してしまった場合の症状や治療法、感染予防について説明します。
参考文献