前回、システマティック(系統的)レビューとメタ解析において、仮説を立てて文献検索をする点について説明してきました。
文献検索をして、メタ解析をする論文を選んだら、計測された効果(Effect Estimate; Risk Ratio, Rate Ratio, Odds Ratioなど)と分散(Variance)を並べて比較することになります。
例えば、10個の研究があれば、10個のORと分散があり、ばらつきが大きいことも、小さいこともあります。
非常にシンプルにいうと、
- ばらつきが大きいことを異質性(Heterogeneity)
- ばらつきが大きくないことを均質性(Homogeneity)
といいます。
今回はHeterogeneity(異質性)と、その評価方法について解説していこうと思います。
Homogeneity (均質性)とHeterogeneity (異質性)
まずは下の2つのメタ解析の結果(Forest Plot)をみてみましょう。
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例えば、左のメタ解析はわりと結果が似通っていて、右の解析結果はバラバラの結果であると、直感的にわかると思います。
Homogeneity (均質性)であるとは
上の解析結果は直感的にわかると思いますが、分かりやすく詳しく説明していきましょう。
左の研究では24個の結果が掲載されていますが、いずれの結果もRisk Ratiio =1付近にいます。
95%信頼区間(横棒)をみると、どの研究も RR = 1をまたいでいたり、お互いのRRを被っているため、似通った研究結果ということができます。
このような状態をHomogeneity(均質性)といいます。
Heterogeneity(異質性)であるとは
上の結果(Forest Plot)の右側をみてみましょう。
- とある研究は odds ratio (OR)が 1をはるかに下回る
- 別の研究の OR は 1 付近
- ある研究の OR は 1 を上回る
と右に左にと、かなり忙しい結果になっています。
このように、研究毎に有効である、無効である、有害である、と結果がコロコロかわる状態を異質性(Heterogeneity)といいます。
Heterogeneity(異質性)が起こる原因
Heterogeneity(異質性)が起こる原因は様々ですが、大きく分けると
- 研究の違い
- 内的妥当性(Internal Validity)
の2つに分けられます。
研究の違いについて
研究をするには様々な対象集団を決めたり、治療とアウトカムなどを定義しないといけません。例えば
- 対象集団:年齢、性別、人種、基礎疾患
- 治療:薬の投与量・期間など
- アウトカム:おこりやすさ(頻度)の違い
- コントロール:プラセボか、標準治療か
- 追跡期間
などが異なることが多々あります。
例えば、基礎疾患がある場合とない場合では、治療効果が変わってしまうことがあります。
内的妥当性について(Internal validity)
内的妥当性(Internal Validity)の問題として
- 交絡(Confounding)の対処が不十分
- 選択バイアス(Selection bias)
- 誤分類(Misclassification)
などがあげられます。
RCTであれば交絡の懸念は小さくなりますが、コホート研究や症例対照研究では十分にありえます。
選択バイアスは、RCTであっても、ドロップアウト(Loss to follow-up)が多ければ起きます。
誤分類は、どのように治療が定義づけられたか(遵守率も大事)、アウトカムは誤分類がないか(偽陽性や偽陰性)のことを指します。
Heterogeneity(異質性)の例
概念的なところを説明しましたので、ここからは実例でみてみましょう。
血中のコレルテロール値の低下と虚血性心疾患のリスクを解析した研究結果です。
10個のコホート研究から行われたメタ解析になります。
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虚血性心疾患のリスクがどれだけ(何%)減ったかをみているのですが、研究によって20%〜35%くらいでかなりばらつきがあり、Heterogeneity(異質性)があるといえます。
Heterogeneity(異質性)の原因は上にあげた通り、様々な要因で起こり得ますが、今回は
- 年齢
- コレルテロールの減少率
といった第3の因子があげられました。
このようなHeterogeneityの原因となる第3の因子のことを「Effect modifier(効果修飾因子)」と呼ぶことがあります。
年齢で Heterogeneity (異質性)を説明してみる
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例えば、年齢別に分類して、治療による虚血性心疾患のリスク減少率を評価すると;
- 若い(40代より)ほうがリスク減少率は高い
- 高齢(70代より)のほうがリスク減少率は低い
ことがわかります。
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このことを踏まえると、メタ解析の中に
- 高齢者が多い(平均年齢が高い集団)
- 高齢者が少ない(平均年齢が低い集団)
があったことがわかります。
高齢者と非高齢者では治療効果がことなるため、このままメタ解析をすることができません(Pooled effect estimateを算出できない)。
このような場合は、meta-regression (メタ回帰分析)という手法を用いることがあります。これは次回以降に説明できればと思います。
まとめ
今回はHomogeneity(均質性)とHeterogeneity(異質性)について解説してきました。
次回以降は Heterogeneity(異質性)の統計学的な評価の仕方と、メタ回帰分析(meta-regression)について説明していきます。
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メタ解析について、はじめから読みたい方はこちらから
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