先進国を含めて、乳幼児のビタミンD欠乏は世界的な問題の1つになっています。
多くの国は、乳幼児にビタミンDの適切な摂取を推奨していますが、「適量」については未知な部分が多いです。
今回はビタミンDの適量を検証した研究をご紹介します。
ビタミンD欠乏について
活性型ビタミンD(25(OH)D)の血中濃度は20 ng/mlとされていますが、
- 米国の30%程度
- 欧州の40%程度
はこのレベルに達しておらず、乳幼児には潜在的にビタミンD欠乏にあるといわれています。
ビタミンD欠乏の問題として、
- 骨がもろくなる(くる病)
- 免疫力が低下して、感染症にかかりやすくなる
と一般的にいわれていますが、これらの報告は観察研究からのもので、質の高いランダム化比較研究は少ないです。
今回の研究の目的
今回の研究では、2〜24ヶ月のビタミンD摂取量の適量を検討するため、
- 400 IU
- 1200 IU
の2通りの投与を行い、骨の強度と感染症の予防効果について検討しています。
研究の方法
今回の研究はフィンランドで行われました。
- 2013-14年に出生した健常な新生児
- ブドウ糖、抗生剤、光線療法、陽圧換気などは除外
を対象にしています。
治療介入について
研究するに参加した施設毎にランダム化を行い(Blocked Randomization)、
- 400 IUのビタミンD3
- 1200 IU のビタミンD3
を生後2週〜24ヶ月まで等とされています。
ビタミンDは1日1回、経口で投与されており、確認のため
- 投与日誌の記録
- 生後すぐ、12ヶ月、24ヶ月で血液検査
を行なっています。
アウトカムについて
生後24ヶ月での
- 骨の強度
- 感染症の発症率
を確認しています。
研究結果と考察
975人の新生児が研究に参加し、
- 489人が400 IUのビタミンDを
- 486人が 1200 IUのビタミンDを
投与されました。
治療のアドヒアランス(遵守率)はほぼ同じで88%でした。
ビタミンDの血中濃度について
ビタミンDの補充量が通常量(400 IU)と高用量(1200 IU)で比較すると
- 生後 0週:32.73 ng/ml vs. 32.57 ng/ml
- 生後12ヶ月:33.13 ng/ml vs. 46.07 ng/ml
- 生後24ヶ月:34.70 ng/ml vs. 47.16 ng/ml
と、高用量のグループのほうが高かったです。
ビタミンDは脂溶性ビタミンといわれ、体内で蓄積するので、高用量群のほうが血中濃度が高いのは、ある意味当然の結果といえそうです。
骨の強度について
ビタミンDは骨を強くする作用がありますが、通常量と高用量で効果の違いがないか検討したのがこちらです。
様々な場所、方法で骨の強度を調べましたが、通常量と高用量では統計学的な有意差はありませんでした。(95%信頼区間が 0 をまたいでいます)
感染症について
ビタミンDは免疫能を強化し、感染症予防になる可能性が示唆されてきましたが、通常量と高用量で感染症予防の効果がないかみています。
Incidence Rate Ratio (IRR)という指標でみて、統計学的な有意差はありませんでした。(95%CIが 1 をまたいでいます)
つまり、ビタミンDは高用量でも通常量でも感染症の予防効果は変わりませんでした。
まとめ
今回の研究において、2歳未満の乳幼児では、通常量と比較して高用量(1200 IU)のビタミンDを与えるメリットは認めませんでした。
通常量(400 IU)でも十分なのかもしれません。
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