- 『肺炎球菌ワクチンってなにに効くのでしょうか?肺炎ですか?』
- 『肺炎球菌ワクチンの有効性って確かなのですか?』
- 『どのくらいのメリットがありますか?』
など、質問されることがあります。予防接種が推奨されてはいるものの、実際にどのくらい利益があるのか説明できる小児科医は少ないでしょうし、ひょっとしたら気にせずワクチン接種している方も多いのかもしれません。
肺炎球菌は乳幼児の重症な感染症;
- 髄膜炎
- 菌血症
- 肺炎
- 中耳炎
の原因になります。肺炎だけではないのです。
特に2歳未満はこれらの感染症になるリスクが高く、ワクチンで予防する必要があります。
先進国では肺炎球菌ワクチンがすでに導入されており、今回のメタ解析では個々の研究の有効性を統合し、検討しています。
研究の方法
- 2000〜2008年に行われたランダム化比較研究
- 24ヶ月未満の健康な小児
を対象にメタ解析が行われました。
肺炎球菌ワクチンの予防効果
肺炎球菌ワクチンの予防効果の指標として
- 侵襲性肺炎球菌感染症(髄膜炎・菌血症など)
- 肺炎
- 中耳炎
をみています。
統計解析について
今回のメタ解析では
- 研究間でのばらつきが大きい場合はランダム効果
- 研究間でのばらつきが小さい場合は固定効果
を使用しています。(固定効果とランダム効果についてはこちら)
出版バイアス(Publication bias)はFunnel Plotでみています。
研究結果と考察
侵襲性肺炎球菌感染症(髄膜炎・菌血症)について
肺炎球菌ワクチンは、ワクチンと同じ種類の侵襲性肺炎球菌感染症を
- 89%減少させた(95%CI;73%〜96%)
という結果でした。
ワクチンは全ての肺炎球菌をカバーしているわけではありません。全ての種類の肺炎球菌を含めると、侵襲性肺炎球菌感染症を
- 74%減少させた(95%CI; 54%〜85%)
とされています。
肺炎について
(レントゲンで同定される)肺炎について、肺炎球菌ワクチンは
- 29%減少させた(95%CI; 22%〜35%)
と報告されています。
中耳炎について
肺炎球菌は中耳炎の原因菌の1つです。
- ワクチンは中耳炎の発症率を55%減少させた(95%CI, 43%〜64%)
という結果でした。
それぞれのメタ解析の結果はこちらから引用しています。
まとめ
肺炎球菌ワクチンは2歳未満の乳幼児において
- 肺炎球菌による髄膜炎・菌血症のリスクを90%低下
- 中耳炎の発症率を55%減少
- 肺炎のリスクを30%減少
させる効果がありました。
特に髄膜炎や菌血症は非常に重症な疾患で、後遺症が残ることがありますので、確実に予防しておきたいところです。
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