日本は熱性けいれんを起こすこどもが多く、小児のおよそ7〜8%くらいが熱性けいれんを起こすといわれています。
- 解熱薬
- 抗けいれん薬(ジアゼパム(ダイアップ®︎))
- 抗ヒスタミン薬
- キサンチン製剤(テオフィリン)
などは、よく熱性けいれんの時に議論になる薬です。
今回は、それぞれの薬と熱性けいれんとの関連性を整理してみようと思います。
解熱薬(アセトアミノフェン(カロナール®︎、コカール®︎)と熱性けいれん
まず結論から言いますが、発熱時に解熱薬を使用しても
- 熱性けいれんの予防は難しい
- 熱性けいれんは誘発しない
と考えています。
上の記事に過去に論文化された研究結果を解説しています。
こちらの研究では、発熱時に解熱薬を使用しても、熱性けいれんの再発予防はできなかったですし、誘発もしませんでした。
かかりつけ医に「熱性けいれんを誘発するから使用すべきでない」と言われました
- 『発熱時に解熱薬を使うと、一旦解熱して再び上がるときにけいれんが起こります。ですので、解熱薬は使用するべきではありません』
と外来で指導されていることがあります。
一見するともっともらしいコメントですし、未だにこのような指導をされていることがあります。
ですが、「解熱薬を使用して実際にけいれんが増えた」という明確なデータはありません。(「増えなかった」というデータはあります)
解熱薬を使用する目的について
ここまでのことを整理すると、
- 解熱薬はけいれんを誘発しない
- 解熱薬はけいれんを予防しない(するかもしれないという論文はあり)
といえます。解熱薬を使用する時に、熱性けいれんのことは特別に心配しなくてよいでしょう。
解熱薬を使用すると、
- 解熱するため体が和らぐ
- 痛みにも効く
ため、お子さんが辛そうでしたら使用するメリットはあるでしょう。
逆に、水分や食事がしっかり摂取できていて、本人が元気なら無理して使う必要はないと考えています。
解熱薬で病気が治るわけではありませんよ
- 「解熱薬を使用すると熱が下がりますが、しばらくすると、また発熱します」
と相談されることがあります。
例えばアセトアミノフェン(コカール®︎やカロナール®︎)は使用しても、3−4時間程度すると効果は徐々に弱まってくるので、また発熱してしまいます。
むし歯に痛み止めをしても、むし歯が治らないように、かぜに解熱鎮痛薬を使用しても、かぜが治るわけではありません。
かぜによる合併症に注意しながら、自然に免疫力で治るのを待つのがよいでしょう。
抗けいれん薬(ジアゼパム(ダイアップ®︎))と熱性けいれんについて
ダイアップ®︎(ジアゼパム)は、熱性けいれんの再発予防として、よく使用されています。
ですが、その使用方法は、医師によって微妙にことなることがあります。また、近年、ガイドラインも変更されています。
ダイアップ®︎(ジアゼパム)の一般的な使用方法
ダイアップ®︎(ジアゼパム)の一般的な使用方法ですが、
- 37.5〜38.0℃を目安として、1回目の坐薬を使用する
- 8時間後に発熱が持続すれば、同じ量の坐薬を使用する
とされていることが多いでしょう。
いつまで続けるかも、医師によるさじ加減が多いですが、
- 最終発作から1〜2年
- 4〜5歳まで
のいずれかを採用している医師が多いでしょう。ですが、この方針に明確な根拠がありません。
熱性けいれんガイドラインは改定されています
2015年に熱性けいれんのガイドラインが改定されています。
主に変わった点ですが、
- 改定前:
短時間のけいれん発作でも、2回以上の熱性けいれんがあった場合は予防投与が推奨されていた - 改定後:
短時間のけいれん発作であれば、基本的に重症化の心配はないため、けいれんを繰り返した場合でも、予防投与はしなくてもよい
と変わっています。
ガイドライン改定後の予防投与の適応基準
ガイドラインが改定されてからの、ダイアップ®︎(ジアゼパム)の適応ですが、
- けいれんの持続時間が15分以上
または、以下の項目のうち2つ以上を満たすけいれんが2回以上
- 部分発作または24時間以内に繰り返し起こる発作
- 神経学的な異常や発達遅滞がある
- てんかんの方が家族内にいる
- 12ヶ月未満
- 発熱後、1時間未満で発作が出現した
- 38℃未満での発作
となっています。
ダイアップ®︎(ジアゼパム)にも副作用があります
ダイアップ®︎(ジアゼパム)には副作用があり、
- 眠気がでやすくなる
- ふらつきが出る
が代表的です。ふらついてこどもが転倒し、頭をぶつけてしまう例もありますので、使用後は1日くらいは注意したほうがよいでしょう。
第一世代の抗ヒスタミン薬と熱性けいれんについて
第一世代の抗ヒスタミンは副作用が多く、乳幼児への使用はおすすめできない点は、繰り返し説明してきています。
この理由として、
- 熱性けいれんの持続時間が長くなる
- 熱性けいれんを誘発するかもしれない
があります。
抗ヒスタミン薬は熱性けいれんの持続時間を延長させる
- 抗ヒスタミン薬を投与した場合、熱性けいれんの持続時間が長い傾向にあった
とする研究結果は国内外を合わせて複数あります。
けいれんの持続時間は短時間であれば脳に与える影響は少ないですが、長引くのは好ましくないでしょう。
抗ヒスタミン薬は熱性けいれんを誘発するかもしれない
また、抗ヒスタミン薬は熱性けいれんを誘発するかもしれません。
上の論文1本しか見つけられませんでしたが(他に論文をご存知の方がいたら教えてください)、熱性けいれんの誘発を示唆した論文もあります。
キサンチン製剤(テオフィリン)と熱性けいれん
テオフィリンをはじめとしたキサンチン製剤は、ひと昔前は気管支喘息の患者でよく使用されていました。
こちらの論文で、テオフィリンの内服と熱性けいれんの持続時間の関連性をみています。
- テオフィリンを内服していると、熱性けいれんの持続時間は長い傾向にある
という結果でした。
現代ではあまり使用されなくなった薬ですが、特に気管支喘息のあるお子さんはテオフィリンが使用されていることがあるので、まだ注意が必要といえます。
まとめ
今回は、熱性けいれんと薬の関係についてレビューしてみました。まとめると、
- 解熱薬はけいれんを誘発しない、予防もしない(or するかも)
- ダイアップの適応基準は変更された
- 抗ヒスタミン薬はけいれんを誘発させるかもしれない
- 抗ヒスタミン薬やテオフィリンはけいれんの持続時間が長くなるかもしれない
といえます。