前回までに、メタ解析の結果を中心に、抗ヒスタミン薬、去痰薬、咳止め、ハチミツ、気管支拡張薬、解熱剤のの有効性を検証してきました。
今回は、
- 整腸剤
- 制吐剤
- 抗生物質(抗菌薬)
について、簡単に説明していければと思います。
整腸剤について
整腸剤というと、
- ラックビー®︎
- ビオフェルミン®︎
- ミヤBM®︎
などが該当します。
下痢が続いて病院に受診し、
「胃腸炎(おなかの風邪)ですので、整腸剤(お腹の調子を整える薬)を飲んで、様子をみましょう」
と説明を受けたことのある方も多いでしょう。
▪️ 整腸剤の有効性について
こちらのシステマティックレビュー・メタ解析で、胃腸炎において整腸剤の有効性が検討されています。
小児の臨床研究は少ないことが多いのですが、今回は56もの研究が行われています。
結論をいうと、
- 整腸剤は下痢の持続時間を約1日短くした
という結果でした。
▪️ 整腸剤は下痢の期間を短縮するかもしれない
胃腸炎の下痢は短くても数日、長いと数週間ほど続くことがあるので、整腸剤は「飲んだらすぐに良くなる」というわけではありません。
ですが、下痢の期間が1日短くなるのは大きいと思います。
また、下痢のときは、お尻の周りが荒れることがありますので、注意してくださいね。
抗菌薬(抗生物質)について
抗菌薬(抗生物質)は、その名の通り、細菌をやっつけるために作られたお薬です。
日本の小児での処方は好ましいものではなく、そのほとんどが第3世代のセフェム系(フロモックス、メイアクト、バナンなど)やマクロライド系(クラリス、ジスロマック)が乱用されています。
▪️ 抗菌薬の有効性について
こちらの研究では、かぜをひいた小児と成人を対象に、抗菌薬(抗生物質)の有効性を検討しています。結果ですが、
- 抗菌薬を使用しても、かぜ症状の持続期間は変わらない
- 抗菌薬を使用すると、副作用の症状が新たに出る
となっています。
▪️ かぜに抗菌薬は必要ないですよ
時々、
- 「心配なので、抗菌薬をください」
- 「悪化させたくないので、抗菌薬を処方してください」
とお願いされることがあります。
しかし、そもそもかぜはウイルス感染が9割で、抗菌薬を使用してもよくなりません。
なぜなら、抗菌薬は細菌を殺すことはできても、ウイルスには全く無効だからです。
抗菌薬を多用することで、思わぬ副作用にあったり、耐性菌をさらに増加させる恐れがあります。
現に、日本ではマクロライド系の抗菌薬が乱用されたため、マイコプラズマの9割が耐性菌となった時期があります。
抗菌薬は必要最小限の使用に抑えるほうが、賢明といえます。
まとめ
今回は整腸剤と抗菌薬のメタ解析の結果を簡単にレビューしてきました。
まとめると
- 整腸剤は下痢の期間を1日くらい短縮する
- かぜに抗菌薬は無効
- 抗菌薬を使用すると、副作用や耐性菌を助長する
といえます。
次回は、これらの結果をうけて、かぜに必要な薬について、少し考えていこうと思います。
▪️ あわせて読みたい