小児の肥満について、これまでに様々な記事を書いてきました。
こどもの肥満は将来の糖尿病や心疾患のリスクになりえるのですが、これら健康上の問題だけでなく、こどもの精神や心理社会的な問題を起こすことがあります。
具体的には、
- いじめ、不登校
- チック
- 抜毛症
- 心因性の咳、嘔吐、下痢
- 頻尿、遺尿症状
などがあります。
小児肥満では、周囲から受けるストレスが多い可能性があり、性格に影響をしたり、身体活動の低下につながる可能性が指摘されています。
小児肥満と性格について
- 『肥満と性格って関係あるんですか?』
と質問されてしまいそうですが、過去の研究から小児肥満と心理的な特徴がいくつか報告されています。
肥満と癇癪について
- 小児肥満があるとかんしゃく(癇癪)を起こしやすい
という報告があります。
さらに癇癪を起こすとパニック状態になるため、それを鎮めようと保護者がお菓子など甘い物を食べさせたり、好物だけをとらせると、さらに肥満が助長されます。
肥満と心理・性格的な特徴
癇癪(かんしゃく)以外にも、心理的な特徴として報告はいくつかあり、
- 抑うつ傾向
- 自己主張が少ない
- 負の感情に対処するために、寝る・食べる
- 自己評価が低い
- 温和である
など、様々な指摘があります。
遊びに対して消極的な傾向にあるので、活動的な遊びを好まず、結果として運動不足となり、肥満を増悪させている可能性があります。
肥満と不登校について
不登校の原因
不登校の直接のきっかけで
- 学校生活:36%
- 本人の問題:35%
- 家庭生活:19%
- 不明:6%
と報告されています。
さらに、最近は不登校と発達障害などとの関連も指摘されており、
- 学習障害
- 注意欠損・多動性障害
との関連もいわれています。
いじめについて
pediatrics.aappublications.org
こちらはアメリカでの報告になりますが、
- 継続的にいじめにあっている場合、44.6%が最低の心理社会的健康レベルであった
と報告されています。
いじめによって、長期間の心理的な健康が損なわれ、自尊心の低下や肥満の要因になっている可能性があります。
不登校と肥満について
- 不登校が原因で(ひきこもりになり)肥満になる
- 肥満が原因で(いじめなどで)不登校になる
の両方の可能性があります。
不登校になった場合、
- 食事・睡眠が不規則になる
- 運動の機会が減る
- 間食が増える
など、肥満を増悪させる環境にあります。
まとめ
小児肥満は心理的な問題と密接に関連しており、いじめや不登校との関わりも見逃せません。
小児科医として、小児肥満の性格的な特徴を理解するとともに、学校や家庭環境への配慮も必要といえます。
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