小児科

妊娠中に魚油(Fish Oil)を摂取すると、こどもの体型は適正、骨密度が高くなるかもしれない

近年、妊娠前や妊娠中のサプリメントが注目されています。

例えば、葉酸摂取が神経管欠損(Neural tube defect)の予防効果があるのは有名な話です。

妊娠前や妊娠中に適切な栄養を摂取することで、生まれてくる子供の成長・発達によい影響がないのか検討された研究が多数あります。

今回は、魚油(Fish Oil)とこどもの体型・骨密度などを検討した研究を紹介します。

www.bmj.com

研究の背景

妊娠中や乳児期の食生活は、小児の発達や健康に非常に重要です。

魚油(fish oil)に含まれる「n-3 長鎖不飽和脂肪酸(LCPUFA)」が出生時の体重に影響する報告はありました。

一方で、出生後の身長、体重、肥満、骨密度といった指標については不明のため、今回の研究が行われました。

 

研究の方法

コペンハーゲンにある単施設でランダム化比較試験(RCT)が行われました。

対象となったのは、736人の母(とその子供)です。

方法として、

  • 1:1にランダム化をし
  • 妊娠24週〜出産後1週間
  • 魚油(Fish oil)vs. オリーブ油

をカプセルから摂取しました。

魚油には、エイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸が含まれていました。

アウトカムについて

アウトカムは6歳までの

  • 身長
  • 体重
  • BMI
  • 頭囲
  • 腹囲
  • 骨密度(DEXA: dual energy x ray absorpiton scans)

です。

BMIは体重、身長を標準化し、z-scoreで計算されています。

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研究の結果と考察

双胎妊娠を除外して、合計688人をランダム化し、

  • 魚油:341人
  • オリーブ油:347人

を割り当てました。アドヒアランスは70%以上で、両群に有意差はありません。

BMIについて

BMIを標準化した値(z-score)では、6歳時では魚油群のほうが 0.14だけz-scoreが高かったです(95%CI, 0.04〜0.23)。およそ 0.4 kg相当です。

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(図は論文より)

その他の指標について

その他の指標として、魚油グループのほうが

  • 体重/身長比が高い
  • 腹囲が大きい
  • 頭囲は有意差なし
  • やせ・肥満の割合も有意差なし
  • 骨密度は高い

といった結果でした。 

補足として

「BMIが増えているから、肥満になるのでは?」とご心配される方がいるかもしれません。

しかし、肥満の基準を超えている人の割合は魚油でもオリーブオイルでも同程度です。

さらに、骨密度、脂肪、筋組織がバランスよく成長した結果、BMIがやや大きくでていると著者らは考えています。

特に、乳幼児期は「やせ」は免疫力の低下に伴う感染症や、気管支炎・喘息発作の重症化の可能性があるため、体重を至適範囲におさめるのは重要と考えています。

 

まとめ

妊娠24週から出産後1週間に、魚油を摂取した妊婦の子供は、体格が大きい傾向にありましたが、肥満者の割合は増加していません。

骨密度は増え、筋肉・脂肪組織の割合がバランスよく増えた可能性があります。
妊娠中の魚油摂取は、出産後のこどもの成長に役立つのかもしれません。

 

 

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Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。