- 「鼻水が出ているので、止める薬をください」
と小児科外来でお願いされることが多々あります。
ですが、風邪に対する鼻水止め(抗ヒスタミン薬)の有効性についてご存知の方は少ないでしょう。
さらに、小児に抗ヒスタミン薬を使用することで起こりうる副作用についても、知っておいてよいと思います。
今回の記事では以下の内容を解説しています。
本記事の内容
- 小児のかぜと抗ヒスタミン薬のポイント
- 抗ヒスタミン薬について
- 抗ヒスタミン薬の副作用
- 危険な薬の組み合わせ
の4点を中心に解説していきます。
近年、アメリカ小児科学会をはじめとした小児科の学術団体は、ペリアクチン・ポララミン・レスタミン・アタラックスP・タベジールといった第一世代の抗ヒスタミン薬はを、(特に5〜6歳未満の)小児には使用しないように勧告しています。
この詳細についても解説していければと思います。
小児の第一世代の抗ヒスタミン薬のポイント
ペリアクチンやポララミンなどの第一世代の抗ヒスタミン薬ですが、
- かぜの症状に対する有効性がほとんどない
- 滲出性中耳炎の改善が遅れる
- 眠気の副作用があり、長期的に内服すると学習の妨げとなる
- 痙攣を誘発したり、持続時間が長くなる
といった指摘がされています。
このため、小児科系の学術団体(アメリカ小児科学会)では小児に処方しないように勧告していますし、日本の小児科外来でも使用される頻度は減ってきていると思います。
抗ヒスタミン薬ってなんですか!?
- アセチルコリンによる影響
- ヒスタミンによる影響
で鼻水が出ています。
この後者である「ヒスタミン」を薬でブロックしてしまえば、鼻水の量が減ると考えられ、小児の鼻水でよく使用されています。
第1世代の抗ヒスタミン薬
- ペリアクチン®︎(シプロヘプタジン)
- ポララミン®︎ (d-クロルフェニラミン)
- アタラックス®︎ (ヒドロキシジン)
- レスタミン®︎ (ジフェンヒドラミン)
- タジベール®︎ (クレマスチンフマル酸)
第1世代の抗ヒスタミン薬が小児のかぜにNGな理由
「鼻水を止めてくれる薬なのになぜダメなのでしょうか?」
と思われたかもしれません。ですが、薬には必ず副作用がありますので、まずはデメリットについて理解しましょう。
第1世代の抗ヒスタミン薬は、脳へ作用します
抗コリン作用という副作用もあります
有効性に関して疑問視されている
第1世代の抗ヒスタミン薬は海外で勧告がでている
第1世代の抗ヒスタミン薬が含まれている市販薬品
ほとんどの市販の小児感冒薬には第一世代の抗ヒスタミン薬が含まれています。
アンパンマンのシロップにも第1世代の抗ヒスタミン(クロロフェニラミン)が入っているので注意しましょう。基本的に、風邪による鼻水は無理に止めないほうが良いでしょう。
併用しているお薬も注意して下さい
例えば、抗生物質が同時に処方されることが多いでしょう。
風邪で、良く処方されている理由として、抗菌薬としての殺菌作用以外に「気道分泌作用がある」や「抗炎症作用がある」が謳い文句になっているようです。
マクロライド系の抗生物質は:
- エリスロマイシン:エリスロシン®︎
- クラリスロマイシン:クラリス®︎、クラリシッド®︎
が処方されていることが多いです。
第1世代の抗ヒスタミン薬と上記のマクロライド系抗生物質の組み合わせは避けた方がよいです。
この2種類の薬は相互作用を起こして、不整脈(QT延長症候群)を起こすことがあります。
風邪の治療薬で不整脈を起こすなんて、全くワリにあいません。
第2世代の抗ヒスタミン薬は安全ですか?
基本的には第1世代の抗ヒスタミン薬より安全でしょう。
ですが、第2世代の抗ヒスタミン薬の一部は、非常に眠気が強くでるものがあります。
例えば:
- ザジテン (ケトチフェン)
- セルテクト (オキサトミド)
- ゼスラン (メキラジン)
- アゼプチン (アゼラスチン)
は眠気を誘発する作用が比較的強いです。
特に、セルテクトとザジテンは眠気を起こす作用が第1世代の抗ヒスタミン薬と同等かそれ以上ですので、注意が必要です。
まとめ
今回は小児における抗ヒスタミン薬について説明してきました。
使用するのはひどいアレルギー症状(蕁麻疹など)くらいで、小児のかぜ薬として使うべき薬ではないと考えています。
理由としては、
- そもそも風邪に対する有効性はわずか
- 眠気、痙攣誘発など副作用が多数ある
- 薬の組み合わせによっては、不整脈のリスクがある
があげられます。
アメリカ小児科学会などが勧告を出されており、日本の小児科でも徐々に使用しない文化が浸透しつつある理由を分かっていただければと思います。
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