子供の鼻水のホームケアを知りたい保護者の方々へ
- 子供に鼻水が出ているけれど、自宅で様子を見ていて良いかわからない。
- あと自宅での対処法とかあれば、ついでに知りたいと考えていませんか?
本記事では下記の内容を中心に解説します。
本記事の内容
- 子供の鼻水のポイント
- 鼻水について知ってほしいこと
- 家庭でもできる鼻水のホームケア(自宅での対処法)
小児科外来はかぜのお子さんが最も多い受診理由です。小児科的な視点でどのように鼻水に対処したら良いか、解説していこうと思います。
子供の鼻水のポイント
小児の鼻水は、次の3点が大切です:
- 鼻水は体の自然な防御反応で、多くは治療(投薬)が不要です
- 鼻水が黄色いからといって抗生剤が必要なわけではありません
- ホームケアで十分対処できることが多いです
鼻水にまつわる知識
まずは、鼻水に関して知っておいても良い知識について説明していこうと思います。
鼻水は体の防御反応
「鼻水が出てきました。悪化する前に、早めに受診しました」
と小児科外来に受診される患者さんは多数います。「大事に至らないよう、早めに医療機関に受診して、早めに治療をしてしまおう」というお子さんのことを思う保護者の気持ちの現れであると感じています。
ですが、鼻水はウイルスなど病原体を体外に排出しようとする防御反応であり、それだけでは治療は不要なことがほとんどです。
何となく煩わしそうにしている鼻水を止めてあげたくなる気持ちは十分わかりますが、かぜに対する鼻水止め(抗ヒスタミン薬)の有効性は疑問視されています(おそらく効かないでしょう)。
詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照ください。意外と知られていませんが、鼻水止めの薬は副作用の報告が多い薬ですので、近年、小児科ではむやみに使用しないようになってきています。
鼻水の色が黄色いですが大丈夫ですか?
「鼻水が黄色くなって….」「緑色になって…」と鼻水の色を気にする保護者の方々もいます。
また、小児科医でも「鼻水が黄色いから抗菌薬を!」と、安易に使用しているケースもあります。
この考えの根底に「黄色いor 緑色の鼻水は細菌感染(副鼻腔炎)」という考えがあるようです。
しかし、実際のところ、鼻水が黄色く見えるのは白血球が混じったり、細菌や鼻の粘膜の死骸がいるからです。ウイルスが入ってきて、鼻に感染し、それによって鼻腔内の常在菌のバランスが変化すれば白血球が活動したり、その結果、多少なりとも色が変わるのはある意味当然の結果です。
風邪による鼻水でも黄色くなることは多々ありますので、色だけを気にする必要はないと考えています。
どのような時に受診したら良いですか?
受診の目安を一言ですが、
- 睡眠できない
- 水分・食事が摂取できない
- 長引いている(およそ10日〜2週間程度)
- 発熱が5日以上続いている
- 呼吸が苦しそう
があたりが目安になります。
風邪による鼻水であれば、熱は数日くらい、鼻水は1〜2週間程度で軽快することが多いです。日常生活に困るレベルであれば、一度受信されても良いでしょう。
風邪の自然経過については、こちらで解説しています:
家庭でもできる鼻水のホームケア
鼻水だけでお子さんが元気であれば、ホームケアで十分なことが多いです。
対処法としては、
- 鼻をかむ
- 吸引器で鼻水を吸う
- 鼻を洗う
- 加湿をする
あたりでしょう。
鼻をかむ
子供は鼻をすすってしまうことが多く、喉の奥にたれ込むと咳が出てしまいます。
鼻水をすすっていると、中耳炎や副鼻腔炎を起こすきっかけになり得ますので、鼻をすすらず、外に出す習慣を作ると良いでしょう。
3〜4歳のお子さんであれば、ほとんどの子供が上手に鼻を噛めるようになります。
鼻水でやティッシュで擦ったりして、鼻の下が荒れてしまったら、ワセリンなどの塗り薬で皮膚を保護してあげましょう。
吸引器で鼻水を吸う
鼻水の吸引器具を使えば、効率的に鼻水を吸うことができます。いくつかタイプがあり、
- 手動式:口で吸う、安価、感染のリスクあり
- 電動式(気軽に持ち運び可):吸引力はやや弱い、手頃な値段
- 電動式(持ち運び困難):吸引力は強い、少し高い
となります。それぞれに利点と欠点があり、こちらで詳しく解説しています。
こちらは保護者が口で吸うタイプの吸引機で、ドラッグストアなどで安価に販売されています。
欠点としては、鼻水を吸うにはそれなりの肺活量が必要でなのと、保護者にも感染の恐れがある点です。
こちらは持ち運び可能なタイプの吸引器です。
手軽で操作しやすく、値段も5000円前後のものが多いです。
一方で、吸引力がやや弱いのが欠点になります。
こちらは自宅に置いておくタイプの電動式の吸引器になります。
病院で使用しているものと性能的にはほとんど変わりません。
やや高価ですが、最近は1.5〜2万円程度で購入可能となっています。
数日に一度、鼻を吸うためだけに病院に受診するより、ご自宅でマメに鼻を吸ってあげたほうが良いと考えています。
鼻を洗う
鼻を少量の生理食塩水や鼻洗い専用の粉で洗浄液を作り、洗ってあげることも可能です。
風邪では鼻の奥にウイルスや細菌、鼻水などが詰まっていることが多く、これを洗い流して、綺麗にしてしまう方法です。
鼻洗いの液は市販品を使用しても良いですし、500mlのぬるま湯に小さじ1杯(約5g)の食塩を入れると良いでしょう。
シリンジで鼻に液を入れても良いですし、専用の鼻洗い器具を使用しても良いでしょう。
「ツーンと痛くなりませんか?」と質問されることがありますが、洗浄液の浸透圧が低いと痛みがありますが、専用の粉や食塩水であれば全く痛みはありません。
私は慢性副鼻腔炎があるため、こちらで毎日のように鼻を洗っていますが、痛みは全くありませんし、鼻が通るので非常にスッキリします。
まとめ
今回は子供の鼻水のホームケアについて解説してきました。ポイントとして、
- 鼻水のみであれば、ホームケアで十分なことがほとんど
- 鼻水は、鼻をかむ、鼻水を吸う、鼻を洗う
- 抗菌薬や抗ヒスタミン薬は不要なことがほとんど
となります。
小児はよく風邪をもらいますし、鼻水に悩まされることが多々あると思います。
ご自宅での対処法など、簡単に頭に入れておくと良いでしょう。
・CURRENT Diagnosis and Treatment Pediatrics, Twenty-Fourth Edition
・Nelson Textbook of Pediatrics, 2-Volume Set
・Nelson Essentials of Pediatrics, 8e
・Medical Note presents
・小児科学, 10e
・小児の薬の選び方・使い方
・HAPPY!こどものみかた
・子どもの風邪
・小児科診療ガイドライン
・今日の治療薬