- 『熱性けいれんのある子供に、解熱剤を使用しないでください。熱が上下するので、けいれんが再発しやすくなります』
- 『熱性けいれんの子供に解熱剤を使用すれば、熱が下がるので、けいれんの再発予防になります』
といった指導がされていることが多々あります。
熱性けいれんのあるお子さんへの、解熱薬の使用について
実際には熱性けいれんの子供に解熱薬を使用しても再発率は上がりませんし、けいれんの予防効果も現時点では確定的なことをいえません。
つまり、解熱薬を使用しても、しなくても熱性けいれんの再発には影響しませんので、基本的に熱に伴う苦痛があるようでしたら、使用されて構いません。
解熱薬が熱性けいれんの再発を予防できるか検討しています。
研究の背景
熱性けいれんは3〜5%の小児に起こり(日本では8%くらい)、およそ30%前後で再発します。
熱性けいれんは「発熱」に伴うけいれんですので、解熱薬を積極的に使用をして「発熱」を予防したり、熱を下げてあげれば、けいれんが起こらなくなる、と考える研究者もいました。
今回は解熱薬(アセトアミノフェン、イブプロフェン、ジクロフェナク)が熱性けいれんの再発を予防できるか検討しています。
研究の方法
今回の研究はフィンランドの5施設で実施されたランダム化比較研究です。
5施設での研究ですので、それぞれの施設で別々にランダム化を行う”blocked randomization”という手法を用いています。
熱性けいれんを起こした子供を対象に、治療群とプラゼボ(偽薬)群に分けています。
治療群には;
- 発熱時にジクロフェナク(解熱薬)
- 8時間以降はアセトアミノフェンかイブプロフェン
を投与しました。
けいれんのエピソードは、保護者に専用のシートを渡して記録してもらい、担当の看護師が毎月連絡して確認しています。
治療群とプラゼボ群で、けいれんの再発率を比較しています。
研究結果
研究結果ですが、解熱剤を使用した群としなかった群(プラセボ)では、けいれんの再発率に統計学的な有意差はありませんでした:
- 治療群の再発率:46/197 (23.5%)
- プラセボ群の再発率:8/34 (23.4%)
研究の考察
この研究結果から、解熱剤を使用しても熱性けいれんの予防はできませんでした。
また、再発率は解熱剤は使用しても、使用しなくても同じです。
つまり、解熱剤は熱性けいれんの再発リスクをあげないし、再発予防にもならないといえます。
少なくとも、けいれんの再発のことは気にせず解熱薬を使用されてもよいでしょう。
まとめ
今回の研究では、解熱薬でけいれんは再発しませんし、予防もできませんでした。
現時点の研究結果では、解熱剤はあくまで発熱に伴う苦痛を軽減させる目的で使用しましょう。