前回、こちらの記事で肝炎について、概要を説明しました:
例えば、肝炎の原因となる肝炎ウイルスは、A型〜E型肝炎ウイルスの5種類があり、それぞれ流行地域や特徴が少し異なります。
日本ではあまり聞きなれないかもしれませんが、今回はA型肝炎について説明します。
アメリカなど一部の先進国では、A型肝炎ワクチンは既に定期接種に組み込まれています。
A型肝炎って流行しているのですか?
『B型やC型肝炎は聞いたことがあるけれど、A型肝炎は聞いたことがない』という方が多いかもしれません。
まずは、世界的にどのくらい流行しているか見てみましょう。
緑色が濃くなるほど感染者数の多い地域で、西アジア・中東・アフリカ・中南米で流行しています。
一方、日本やアメリカを含めて先進国では圧倒的に患者数が少ないです。
アメリカでの流行状況
アメリカでの患者数は世界的にみて少ないのですが、0ではありません。
上の地図が示す通り、A型肝炎の感染者は、全米のあちこちで散在しています。
決して安心しきれる状況ではありません。
このため、アメリカでは小児の定期接種に組み込まれています。
日本での流行
日本でも年間症例数は100-400例ほどのばらつきで発生しているようです。
こちらで感染症の流行の動向がみれますので、チェックしておくと良いでしょう。
感染しやすいの状況はありますか?
一般的にA型肝炎は汚染した食事や、便を介して感染します。
となると、小児が感染しやすい状況とは、
- 途上国などで食べた食事
- 学校や保育園・幼稚園で移された
などが想定されます。
しかし約半分(45%)は、A型肝炎にどこで感染したのか不明といわれており、上の例のように典型的でないことが多いです。
A型肝炎に感染するとどうなりますか?
A型肝炎には潜伏期間といい、ウイルスに感染してから症状がでるまで28日ほど時間がかかります(15〜50日くらいの幅あり)。
初期症状で熱・嘔吐などが出て、その後に皮膚が黄色くなります(黄疸)。
初期症状と黄疸で1〜2ヶ月ほど症状が続くことがあります。
B型肝炎やC型肝炎とは異なり、ウイルスが肝臓の細胞に残って、慢性的に感染することはありません。
症状は感染したら必ず出ますか?
A型肝炎ウイルスに感染しても、症状は出ずに自然に治ってしまうこともあります。
特に5歳以下の小児は症状が出ないことがあります。
(70%は無症状と言われています)
6歳以上の小児では、70%以上で黄疸が出るようです。
なかには、劇症型の肝炎といい、重症の肝炎を起こして、死亡してしまう例もあり、決して安心はできません。
A型肝炎ウイルスは便から排泄します
A型肝炎ウイルスは便から排泄するのですが;
- 肝炎の症状がでる1週間前
- 肝炎の症状が終わってから2週間後
まで、ウイルスを便に排泄しているといわれています。
どのように診断・治療をしますか?
基本は血液検査で診断されることが多いでしょう。
A型肝炎に対する抗体(IgMとIgG)をみて判断します。
残念ながらA型肝炎に対する特効薬がないため、本人の症状を和らげてあげるような治療になります。
A型肝炎の予防接種について
日本では予防接種は行われていませんが、アメリカでは定期接種になっています。
A型肝炎のワクチンを導入後、米国ではA型肝炎が減少している
1995年からワクチンが認可され、ワクチンを接種する人が増えました。
徐々にA肝炎ワクチンの接種率は上がり、感染者数も減少しています。
A型肝炎ワクチンを接種できる年齢と有効性について
小児であれば生後12ヶ月から接種可能です。
2回接種が推奨されていて、これは抗体(免疫)がつくのが;
- 1回接種だと > 97%
- 2回接種だと、ほぼ100%
であるためです。
アメリカでは生後12-23ヶ月で定期接種となっています。
どのような人がワクチン接種すべきか?
日本ではA型肝炎のワクチンは予防接種の定期接種などのスケジュールに組み込まれていません。
少なくとも接種したほうがよいのは;
- 流行地域へ旅行する
- 流行している地域から日本へ来る人と生活を共にする
- 血液の凝固因子の異常がある(血友病など)
- 慢性肝疾患がある
などがあげられます。
A型肝炎の予防法について
ワクチンが最大の予防法でしょう。
もし、流行地域に行く予定がある場合、しっかりと手洗いをしましょう。例えば
- 食事前・調理前
- トイレの後
- こどものオムツを替えた後
などに徹底して手洗いをすると良いでしょう。
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